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【コラム 撃戦記[格闘技]】

強さはバランスと格好良さ

2008年5月22日

 “強さ”には“美しさ”がある。美しさは“バランス”だと思っている。そのバランスにかっこいい“生き方”が伴えば言うことなしだ。それが格闘技とは別の世界に“達人”がいるのを本紙で知った。

 5月7日の本紙の「ニュース探検隊」で紹介された脳トレ教授の川島隆太東北大教授(48)だ。「ニンテンドーDS」のゲームソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」を監修。任天堂からの12億円の監修料を辞退したという。大学の「1100万円の給料(年収)は世間一般の同世代よりもらっている。それで十分」と拒否理由を述べた。

 格言に「立って半畳、寝て一畳、いくら食べても二合半」がある。お金はあるに越したことはないが、武道と無欲は究極の極致にある。奥さんは「あんたバカじゃないの」と言ったそうだが、こういう“バカ”と言われる“かっこよさ”が、今の格闘家にいなくなった。東北大医学部卒で医師免許もある。「医者は性に会わない」とペーパードクター。お金がすべての時代に“かっこいい人”とは、まさに「こういう人だ」と思い知らせてくれた。

 かっこいいついでにもうひとつ。好きな柔道家だった井上康生が“退き際”を29歳と決めた。一方でテニスのクル厶伊達公子は37歳で現役に復帰、活躍を見せた。もてはやされた“退き際の美”も死語の時代に康生は「柔道人生に悔いはない」と久々に胸に熱いものを感じさせてくれた。しかし、川島教授の“かっこよさ”はアスリート以上のインパクトがある。科学的トレーニングと医学の進歩で選手寿命は伸び、復帰に異論はないが、かつて引退は“武士に二言は無い”はずだった。川島医師と井上康生の“生き方”がヤケに新鮮に映った。 (格闘技評論家)

 

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