成人識別機能付きたばこ自動販売機で売り上げが激減している。5月の導入から1カ月余りがたち、専用の識別カード「タスポ」の発行枚数も喫煙者の3分の1に満たない中、コンビニエンスストアは、自販機の減少分を吸収し、売り上げを伸ばしている。 日本たばこ協会がまとめた岡山県内のカード発行枚数は5月27日現在で9万5千枚で、推定喫煙者40万人に対する割合は23・9%。「自販機常時利用者」に限ると、65・4%に上るという。 岡山たばこ販売協同組合(岡山市厚生町2丁目)によると、市内のある店舗ではカード導入直後の自販機売り上げが、導入前に比べ9割減と悲惨な状況。5月末にやっと6割減まで回復したという。ある店主は「最初からこうなるのは分かっていた」と我慢を決め込む。 店内でカードの申し込みに必要な書類作成ができるようする店や、カードをその場で貸し出す店も出ており、同組合は「どの店主も知恵を絞って客離れ防止に必死」と話す。 JTによると、識別機能の付いた自動販売機は、5月27日現在で6604台、全台数比97・3%。 7月以降、識別機能なしで販売した場合、許可が取り消されるため、同組合は「この状況が続けば、7月の義務化を境に廃業するところが出てくる」と危機感を強める。 一方、コンビニエンスストアは、カードを持たない喫煙者の支持を一気に集めた。 県内にも展開するポプラ(広島市)は、導入前からたばこの売り上げが倍増。これに伴いパン、飲料の売り上げも伸びているという。同社は「5月は10%増。思わぬ特需」と話す。 コンビニでは未成年者への販売も懸念されているが、各社とも「今後も年齢確認について一層徹底を図る」と気を引き締めている。 自販機が逆境の中、ヒットの兆しを見せるのが、フジタカ(京都府)がリース販売する顔認証式自販機。カードが不要なため、受注が相次ぎ、県内でも100台に迫る勢いという。 10万人の顔データをもとに、3秒ほどで成人かどうかを認証。判別できない「グレーゾーン」の場合は運転免許証で最終確認をする。 しかし、財務省は、まだ顔認証式を認可していない。7月以降は「許可条件違反」となる可能性もあり、今後の動向が注目される。