「桜生水(しょうず)」や「居醒(いさめ)の清水」など趣深い名称の数々が興味をそそる。環境省が発表した「平成の名水百選」である。
七月の北海道洞爺湖サミットへ向け、水環境保全の一層の推進を目的に実施した。一九八五年に旧環境庁が選定した名水百選以外から地元の保全活動や水質、周辺環境などを基準に審査、和歌山県の世界遺産「那智の滝」などを決めた。
岡山県からは新見市の「夏日(なつひ)の極(ごく)上水(じょうすい)」が入った。大佐山北側の夏日地区にあるわき水で、九六年の地滑り対策工事の際に発見された異色の存在だ。まさに平成世代の名水である。ミネラルを豊富に含み、市外から訪れる人も多い。
地域住民が管理組合を設置して保全に努めている。「極上水」の名に愛着と誇らしさを感じる。新見市は「大佐山観光の拠点の一つに」と選定効果に期待する。広島県は呉市の「桂の滝」と北広島町の「八王子よみがえりの水」、香川県は高松市の「楠井の泉」が選ばれた。
風土に根付く水ばかりである。あらためて水に恵まれた国であることを感じる。水は人々の生活や生産などに欠かせない。だが、利便性が高まるにつれて感謝の念も忘れがちになっている。
新旧の名水百選は水の大切さを思い出させてくれる場といえよう。あちこち訪ね、水の恩恵と人々の熱い思いに接したい。