文庫が好きです。たびたび買いますが、引越しの際には惜しげもなく捨てられるので荷物にもならない。
だから、本棚にはそんなに本は並ばない。せいぜい辞書くらいです。新潮社の村上春樹による「雨天炎天」という文庫が好きです。
ギリシャ北部の半島にあるアトスという山は聖なる山で半島全域を女人禁制とし、動物も例外ではない。ここは自治領となっており修道士たちが約2000人程度住んでいる。
ここアトスは峻険な立地からなのか、天候がくるくると変わり移動はほぼ徒歩という
ハードな日程である。あちこちに点在する修道院を四国の八十八ヶ所霊場ほどではないが
とにかく移動するのだが、ギリシャの修道院では巡礼者に対して振舞われるものが
決まっている。
これを村上春樹は本の中で
アトス3点セットと呼んでいた。
甘いコーヒーとルクミというゼリー状の甘いお菓子、そしてウゾーというギリシャの蒸留酒。
甘いものが苦手だった村上は、最初の修道院でこの出されたルクミに辟易したが
だんだんと徒歩の移動がダイハードになるにつれて、むさぼるように食べてしまう・・・という
あたりがとてもリアル・・・・。
後半はトルコ国内を車でまわる、というものですが確か(記憶が確かであれば)
自動車の運転免許のない村上がこのトルコをまわるためにわざわざ
免許をとった・・・とか、この中に書かれてたような・・・。もう既に手元にありませんこの本。
続いて「遠い太鼓」
570ページもあるから、文庫にしては厚いほうだろう。
またまた、村上春樹だ。最初に読んだのは
みなが知っているノルウェイの森だった。
ハードカバーのものを友人に借りて読んだ。
次に読んだハードカバーは自分で買った「スプートニクの恋人」だった。
可もなく、不可もなくで、引越ししたときに捨ててきた。
それについで、多々出版されている彼のエッセーを読んだ。
エッセーのほうが好きだなあと漠然と思った。
遠い太鼓は・・・とにかく、面白い。日記のようでもあるけど
ノルウェイの森を生み出すまでの彼の苦しみ・・・逡巡と錯綜、思いの反芻が
綴られている。
ギリシャでの滞在の様子・・・。
雨天炎天にもつぐ、面白さだ。
by 刑天
たいとるなし