現在位置:asahi.com>文化・芸能>芸能>映画> 記事 映画「相棒」大ヒットのわけ 水谷豊、キャラはまる2008年06月07日11時05分 映画「相棒―劇場版―」の勢いが止まらない。先月1日の公開以来、観客動員311万人を超え興行収入は37億円に。ロングラン上映中で、配給する東映の興行記録を塗り替える可能性も出てきた。もとはテレビの2時間ドラマが、ここまで化けた人気の背景を探った。
■単発ドラマ→レギュラー化→劇場版で311万人動員 「僕はもはや、杉下右京と名乗ったほうがいいのかもしれません」。「大ヒット御礼凱旋(がいせん)舞台あいさつ」で先月24日、鹿児島市の映画館を訪れた主演の水谷豊はこう言った。杉下右京は水谷扮する刑事の役名だ。「一つよろしいですか?」など右京の口調で話してみせるサービスぶり。 55歳の水谷が、この日と翌25日で、鹿児島、熊本、福岡3県のシネコン9カ所を回る強行スケジュール。満席の会場は大半が女性で、20代から60代まで幅広い。映画館を出たところを取り囲む様子はまるでアイドルの追っかけ。歓声はやはり「右京さ〜ん」だ。 「相棒」は警視庁の窓際部署特命係の、頭脳派右京(水谷)と熱血漢の亀山薫(寺脇康文)が主人公。個性の異なる2人が難事件に挑む。00年の単発ドラマが高視聴率だったのを機にレギュラー化。今年3月終了のシーズン6で100本を超えた人気シリーズだ。 和泉聖治監督は「右京イコール水谷豊と見えるほど、キャラクターがうまくはまったことで『相棒ワールド』が完成した」と語る。幹部候補のキャリア組ながら組織が隠したい問題まで手をつけ閑職に。だがそこでも「政財界など相手に開けてはいけない扉を平気で開けちゃう」。裁判員や死刑制度、冤罪など時事的な題材も積極的に取り上げた。 ドラマを立ち上げたテレビ朝日の松本基弘・チーフプロデューサーは水谷の「与えられたキャラを自分に引き寄せる力」を強調する。過去の作品でも「傷だらけの天使」のアキラ、「熱中時代」の北野広大など役名がいまも記憶される。「キャラが変わると今度はその人物にしか見えない。一方でジャンルや役柄を超えて水谷豊にしかできない表現ができる俳優」 出世作「傷だらけの〜」で演出を担当した恩地日出夫監督は「当初は児童劇団出身のまじめなだけの印象だった」と振り返る。だが、放送開始後、主演の萩原健一と肩を並べる人気が出た。「自分とは全然違うチンピラを無理やり演じ、役になることをつかんだ。森繁久彌にはいろんな役に対応できる引き出しがあるが、何を演じてもやっぱり森繁という存在感もある。同じように、『何をやっても水谷豊』と呼ばれる俳優になるかも」 水谷豊ブームと呼べる現象も起きている。22年ぶりのアルバム「TIME CAPSULE」がオリコン初登場第2位となり、「SMAP×SMAP」(フジ系)など他局も含めて約100本に出演した。宣伝担当者も「異常な多さ。他局からも『ぜひに』と出演が歓迎される珍しいケース」という。 集中的な露出はテレビ局主導の映画では珍しくない戦略だが、新鮮に見えたのは「ドラマ以外で露出する機会が極端に少ない水谷さんだからこそ」。TVライターの桧山珠美さんは言う。 水谷自身は「25年ぶりの映画が『相棒』でいいのか迷った時期もあったが完成作品を見て良かったと確信した。今は、やれることは何でも経験したい精神状態」。ブームは「過去の僕の作品を並べたとき、『あの頃は』と感想を言いたくなるエネルギーが(視聴者の間で)高まったような気がする」と、ノスタルジーとのつながりで冷静に読む。 ■若者向けに事前PR戦略 実は、映画化にあたって製作委員会では不安要素も指摘されていた。ドラマの視聴者が40代以上に偏っていたのだ。東映の出目宏・宣伝プロデューサーは「シネコン中心の今の映画興行は20、30代の女性が来ないとヒットしない。若者の認知度を高める戦略を練った」と明かす。 深夜や土日など若者が家にいる時間帯を中心に、再放送や解説番組、「相棒」の脇役が登場するスピンオフドラマなどを4月以降、約50本も流した。公開後の東映の調査では、男女比、年代ともにまんべんなく訪れているという。 桧山さんは言う。「旬なタレントを起用した薄っぺらいドラマが目立つ中、ノンフィクション風の、現代社会と絶妙にシンクロしたドラマを8年かけて作り続けてきた。それが、年代に関係なく『相棒マニア』と呼ばれるような人たちを増やすことにつながったのでは」(高橋昌宏) ■数字で見る「相棒」ブーム 劇場版興行収入 約37億円(4日現在) ドラマの視聴率 16.1%(シーズン6平均) 文庫本シリーズ 67万3千部 コミック(1巻)12万部 スピンオフ小説 12万部 劇場版ノベライズ4万5千部 ガイドブック 5万部 同(劇場版) 3万3千部 PR情報この記事の関連情報文化・芸能
|
ここから広告です 広告終わり どらく
鮮明フル画面
一覧企画特集
ショッピング特集朝日新聞社から |