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【社説】

タクシー接待 “税金感覚”がないのか

2008年6月7日

 財務省はじめ中央省庁の職員がタクシー運転手から金品などを受け取っていた問題は、あきれたとしか言いようがない。官僚の倫理観はどこへいったのか。厳正な処分と再発防止の徹底を求める。

 深夜の霞が関には、ずらりとタクシーの列ができる。ほとんどが個人営業の車だ。「役人は上客なんだろうな」と思っていたら、運転手が“接待”するほど「お得意さま」だったわけだ。

 財務省はタクシー運転手から現金や金券、ビールなどを受け取っていた職員が三百八十三人に上るという内部調査結果を発表した。町村信孝官房長官は国会で、問題の職員は環境、総務など計十三省庁・機関で五百二人に達したと明らかにした。今後の調査次第で、職員や関係省庁の数はさらに増えるだろう。

 中でも、財務省主計局の係長級職員は約五年間にわたって一回当たり二千−三千円の現金やクオカードを、年間百五十回にわたって受け取っていた。少なくとも総額百五十万円を超す金額になる。

 いうまでもなく、役人が深夜帰宅する際のタクシーチケット代は税金で賄われている。税金を使ったタクシー料金の見返りに現金を受け取ったのは、いわば「税金の割り戻し分」を自分のポケットに入れたようなものではないか。

 運転手が金品相当額を上乗せしたタクシー代を請求し、役人に払い戻していたなら、税金を横領した形になる。そうでなくても、国家公務員倫理法に触れる可能性がある不(ふ)明瞭(めいりょう)な行為であるのは、間違いない。関係省庁は徹底して事実関係を調べ、法に照らして厳正に処分すべきだ。

 とくに、財政再建のために、真っ先に予算の無駄や非効率を削らなければならない立場であるはずの財務省職員が大勢、かかわっていたのは深刻である。

 「ちょっとした役得」程度に考えたのかもしれないが、こんな甘い税金感覚だったとは、財政を担う官僚のプライドと気概はどうなったのか、と問わざるをえない。

 タクシー運転手が遠距離の上客を確保したい気持ちは分からなくはない。業界の激しい競争はよく知られている。だからといって、役人の特定客に“過剰サービス”しているのでは、一般客は納得しにくい。「それなら、初めから遠距離は割引せよ」という声も出るかもしれない。

 この際、監督官庁や業界はタクシー料金をめぐる実態や問題点の総点検も必要ではないか。

 

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