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社説:居酒屋タクシー 税金でいい思いは許されない

 13の中央省庁・機関で500人余りが深夜タクシー利用に際して、商品券などを受け取ったり、ビールなど飲食の接待を受けていたことが明らかになった。中でも、財務省では、財務省本省、国税庁に在籍する2681人のうち、約15%にのぼる383人がタクシーの運転手から、何らかの金品を受け取っていた。そのうちの一人は現金だけでも187万円を受け取っていた。

 国の予算から支出される深夜帰宅などのタクシー利用で、運転手から供応を受けることは、公務員として許されることではない。こうした公務員倫理の緩みは許すわけにはいかない。政府は早急に税金が使われている全組織の実態を明らかにすべきである。

 今回、明るみに出た官僚が深夜に公費でまかなわれるタクシーチケットで乗車した際の接待問題は、三つの視点からとらえられる。

 第一は、公務員の間に、タクシー代金が税金で支払われるという認識が欠如していたのではないかということだ。行政は税金でまかなっているのであり、公費の支払いで対価を受け取ることは、犯罪行為といっていい。財務省は、同省がタクシー業界と利害関係がなく、国家公務員倫理規程で禁止されている行為には当たらないとの見解だが、納税者が納得できる説明ではない。

 そこで、公務員の金品授受には、より透明性の高いルールが必要である。公費が支払われる場合は利害関係のありなしにかかわらず、金品の受け取りは禁止しなければならない。

 第二は、10年前に接待汚職事件で当時の大臣、事務次官が引責辞任した財務省(旧大蔵省)の体質の問題である。利害関係がなければいいとか、1回あたりの金額が大きくなければ金品の供与は許されるというおごりや甘えの空気があるとすれば、深刻である。

 財務省は財政再建の実現に向け、歳出削減の先頭に立たなければならないが、これでは示しがつかない。今回の財務省調査でも予算編成を担当する主計局、税の徴収に当たる国税庁の職員の金品受け取りが多かったことは、影響が大きい。綱紀が緩んでいては財政再建はできない。

 第三は、中央省庁の職員の残業問題である。深夜のタクシー利用が多いのは国会への対応などで、勤務が深夜まで及ぶからだ。役人は日付が変わるまで仕事をするのが常識といった悪弊は変えなければならない。

 公務員制度改革と言う以上、こうした問題にも踏み込む必要がある。これは国会改革でもあるのだ。

 今後の調査に際しては、金品授受のみならず、タクシーチケットが適正に使われているかも十分、チェックしなければならない。

 財政再建が正念場を迎えているいま、公務員は身ぎれいでなければならない。

毎日新聞 2008年6月7日 東京朝刊

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