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判決後に会見する遺族の小沢克則さん(左)と妻樹里さん=5日午後、県庁 |
「実刑を望んだのに、無念でならない」。熊谷市で9人が死傷した飲酒運転事故で、運転手に酒を出したとして道交法違反(酒類提供)の罪に問われた同市小泉、飲食店経営大久保博明被告(45)に対し、さいたま地裁は5日、懲役2年、執行猶予5年の判決を言い渡した。遺族はこの判決に納得できず、検察に控訴するよう願い出た。全国で初めて起訴された同罪の判決は、遺族の表情を曇らせた。
両親を失い、弟妹が重傷を負った小沢克則さん(31)樹里さん(27)夫妻。樹里さんは大谷吉史裁判長が読み上げた判決文を聞いた直後から、メモを取る手が震え、止まったという。
「動揺を隠せなかった」克則さんは目を真っ赤に腫らしながら、「被告は(事故を起こした)玉川被告たちにこの1年で24回も酒を出し、飲酒運転を黙認していた。それにもかかわらず執行猶予が付くのは納得できない」と憤る。
樹里さんはこみ上げる涙をしばらくこらえてから、「これが殺人事件ならば、どうだったのか。私たち家族は、殺人事件に遭ったのと同じだと思っている」と話した。
大久保被告は退廷の際、傍聴席に向かって一礼。しかし、その視線は遺族には向けられていなかった。閉廷後、樹里さんが泣き崩れた。傍聴した同被告の家族に笑顔があったからだという。「私たちがまだいたにもかかわらず。本当に反省しているのか。すべて遺憾です」
小沢さん夫妻は、この判決を両親には報告できないと言い切った。「絶対に許していないということを伝えたい」と克則さん。樹里さんは「両親に顔向けできる判決が出るまで、戦い続ける」ときっぱり。
一方で飲酒運転撲滅への取り組みが形に表れ始めた。上田清司知事へ提出された要望書を受け、県は飲酒運転防止ポスターを作成することに。「とてもありがたいと思っている」と感謝し、一人一人に配れるチラシなどの作成も提案した。
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大久保被告の弁護人、中西一裕弁護士は「判決は同罪の最高刑に近く、執行猶予も最長。長くて重いという感想」と話す。ただ実刑判決にならなかったことには、「事故は運転手の玉川被告と同乗者の責任が重い。大久保被告が玉川被告の暴走行為を予見するのは酷」と述べた。控訴するかは、今後本人と相談して決定するという。
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