【成都(中国四川省)成沢健一】中国・四川大地震の土砂崩れで川が埋まってできた四川省北川県の巨大せき止め湖「唐家山ダム」が6日夜、満水になり、左岸から一部の水があふれだした。四川省には、せき止め湖が34個あるが、外に水があふれ出した例は初めて。ヘリコプターで現地に急派された武装警察隊が水抜きを進めるため、新たな排水路の掘削を急いでいるが、予想外の事態に決壊の懸念が高まっている。
新華社通信によると、同日午後2時(日本時間同3時)段階で、せき止め湖に上流から流れ込んだ水量は日本の黒部ダムを上回る2億2370万立方メートルに達し、決壊すれば大惨事につながると予想される。本来、満水になっても決壊防止のために造った排水路から水が自然に流れ出す構造だった。
決壊に備えて人民解放軍成都軍区の部隊が同日夜、せき止め湖下流の江油市に救援船舶を待機させた。中国中央テレビによると、せき止め湖周辺は激しい降雨に見舞われている。
中国の温家宝首相は6日、四川省綿陽市内にある決壊防止指揮部を訪れ、「ダムの水量が増せば危険も増す。科学に基づく思い切った選択が必要だ」と述べ、対策を急ぐよう指示していた。下流住民を避難させ、せき止め湖の堤を爆破することも検討している模様だ。
災害対策本部は、せき止め湖が3分の1決壊した場合と全壊した場合を想定して対策を立て、すでに3分の1決壊を想定して下流の綿陽市などの住民25万人が高台などに避難している。同市内の建物の柱や壁にも、3分の1決壊の「水没予想ライン」が表示されている。全壊の場合、土石流が下流域に押し寄せ、周辺住民130万人以上が被災すると予想されている。
毎日新聞 2008年6月6日 20時54分(最終更新 6月7日 1時22分)