【ソウル中島哲夫】韓国の米国産牛肉輸入再開問題で、対米再交渉を求め「72時間連続」をうたう大規模集会が5日夕、ソウル中心部で始まった。同日は4月の総選挙で与党ハンナラ党が過半数を得た新国会のスタート予定日だったが、野党の欠席で実現しなかった。李明博(イ・ミョンバク)政権と与党は打開困難な窮地に陥っている。
連夜の「ろうそく集会」とデモ行進には子供連れの家族や女性も多数参加し、警察幹部が「反政府のお祭りと化した」と嘆くほど。世論調査でも李大統領と政府・与党への批判が厳しいため、強硬なデモ取り締まりは難しいのが実情だ。
警察側にも負傷者が続出しているが、衝突の際を含め、デモ参加者は検挙しても全員釈放。逆に倒れた女子学生の頭部を踏んだ場面がインターネットに流れた機動隊員は刑事処分、指揮官も懲戒の対象となった。
「抗議は正義」という空気の中で5日始まった集会は、市民団体などで組織する「国民対策会議」の主催。ソウル大など主要大学の自治会も参加を決めた。同会議はさらに、87年の民主化闘争記念も兼ねる10日の集会に全国で100万人参加を目指している。
一方、統合民主党など3野党は法定期日である5日の国会開会をボイコットし、議事堂前で牛肉問題再交渉を求め気勢を上げた。本会議は開かれず議長選出も李大統領の演説もできなかった。
また、4日投票された地方自治体の9首長・43議員の再選挙・補欠選挙では、ハンナラ党が1首長、8議員しか獲得できず惨敗。主要メディアは「大統領に対する審判だ」(朝鮮日報社説)などと報じ、政権・与党からの急速な民心離反を指摘した。
このほか、バシュボウ駐韓米大使が米国産牛肉の安全性への理解を求めた発言が反発を招き、反米感情の高揚が懸念されたり、5日未明にはソウル市庁前広場で、国産牛飼育農場を解雇された男性(56)が焼身自殺を図り重傷を負うなど、騒然とした雰囲気が続いている。
毎日新聞 2008年6月5日 20時16分(最終更新 6月5日 20時22分)