進まぬ訪問看護、地域格差も

 病気や障害があっても自宅で過ごしたいという高齢者が増えているにもかかわらず、在宅療養の拠点となる訪問看護ステーションの整備が遅れている。自治体の約半数がステーションを設置していない上、高齢者人口10万人当たりの訪問看護の実施回数は、地域によって4倍近くの格差があるなど、二十四時間三百六十五日の安心した療養生活には程遠い状況だ。来年度の予算編成に向け、厚生労働省に訪問看護の充実を要望している日本看護協会は「(高齢化の進展で)本格的な“多死”時代の到来を目前にする中、『最期まで自宅で過ごしたい』という国民の願いを実現する訪問看護の拡充が急務」と話している。

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 全国の訪問看護ステーションの設置数は、約5470か所(2006年10月1日現在、介護サービス施設・事業所調査)。全自治体の52.9%に集中しており、残りの47.1%の自治体ではステーションが未整備となっている(05年10月現在、全国訪問看護事業協会調べ)。設置率では、人口規模の小さい自治体ほど低く、規模の大きい自治体ほど高くなっている=グラフ参照。
 また、高齢者人口10万人当たりの一か月の訪問看護実施回数をみると、最も多い地域と最も少ない地域で3.7倍の開きが出ている(07年9月、第6回介護施設等の在り方に関する委員会資料より)。

 ステーションの整備が伸び悩んでいる要因として、日看協では、▽訪問看護師の量的・質的な人材不足▽訪問看護サービスの報酬上の適正な評価の不足▽訪問看護利用者数の不足−などを挙げている。

 訪問看護の場合、利用者からの急な呼び出しに応じられるよう待機する「オンコール」対応が欠かせず、8割近くのステーションが二十四時間体制の届け出を行っている。特に、看護師3人未満の事業所では、看護師が2日に一回、夜間に自宅で待機するなど負担が大きい。
 厳しい労働環境も影響し、06年4−9月の半年間に退職者がいたステーションは全体の約4割に達した。このうち、6割のステーションが求人募集したものの、採用できなかったところが35.1%に上るなど、人材不足が深刻になっている(全国訪問看護事業協会調べ)。

 また、ステーションの経営については、人員規模が小さな事業所ほど経営状態が苦しく、看護師3人未満の事業所では43.8%が、看護師が3−5人の事業所では36.9%がそれぞれ赤字に陥るなど、安定的な事業運営が困難になっている(05年日看協・日本訪問看護振興財団調べ)。

 さらに、医療機関やケアマネジャーからの紹介が十分でないことを含め、病院から在宅へ移行するための地域連携の仕組みや在宅療養中の訪問看護必要者にサービスを結び付ける仕組みが不十分なため、訪問看護利用者の数は微増にとどまっている。

 日看協では、「訪問看護を必要としている人は多いが、実際に利用している人は要介護認定者350万人の1割にも満たない約28万人にすぎない。確実に訪問看護を受けられる環境づくりや制度の見直しが急務になっている」と強調。厚労省に対し、▽訪問看護必要者に円滑なサービスを提供できる新たな仕組みの導入▽来年度の介護報酬改定での訪問看護の適切な評価▽訪問看護拡充に向けた基本方針の策定−などを求めている。


更新:2008/06/06 18:06     キャリアブレイン

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