現在位置:asahi.com>文化・芸能>文化>文化一般> 記事 「ホスピスへの誤解を解きたい」がん治療専門医が出版2008年06月06日10時37分 国立病院機構豊橋医療センターの緩和ケア部長などとして、がん治療に携わる佐藤健(つよし)さん(50)が、ホスピスをはじめ、がんと向き合ってきたこれまでの経験を「緩和ケアでがんと共に生きる」(新潮社)という本にまとめ、出版した。「ホスピスにはまだ誤解も多い。人生の最後をいかに充実させるかという取り組みを知ってもらえたら」と話している。 佐藤さんは84年、名古屋大医学部卒。岐阜県や愛知県の病院で勤務するなかで、がん手術の経験を重ねた。「手術がうまいとうぬぼれていた」と振り返る。 しかし、多くの患者と接するうちに、外科治療の効果と限界を考えるようになった。また緩和についても、痛みの管理だけではなく、心の問題を視野に入れないといけないと思い始めた。 91年に国立豊橋病院(当時)に着任。国立病院の再編問題が持ち上がり、新病院にホスピス設置を求める市民らの「豊橋ホスピスを考える会」に出会った。自らも会に参画。講演でホスピスの重要性を訴え、署名集めの先頭にも立った。市議会も要望に動き、同病院に05年、東海地域の国立病院では初めて、緩和ケア病棟ができた。 がんの末期には痛みなどが襲う。しかし、たとえばモルヒネは中毒になると思われているのは誤解、と強調する。「きちんと適量を使えば心配なく、痛みを取り除くことで生活の質が高まる」と言う。 佐藤さんは、ホスピスには「三つの入院」があって良いという。まず、痛みを取り除く体験入院。次に、看護疲れがたまる家族を休ませるための入院。そして最後の入院だ。「この、初めと2度目の入院も含めてホスピスです。それを通じて、最後の大仕事もできる大事な時期です」 各地の市民団体などの依頼で、これまでの経験や患者から学んだことを講演する機会も多く、それを知った出版社から本の話が持ち込まれた。 本の中では、さまざまな患者との出会いも描いている。読者から「安心しました」「ホスピスが怖くなくなりました」といった声が寄せられているのが一番うれしいという。 「これからも、地域との協力で、よりよく生きるための支えとなるホスピスをつくっていきたいし、いのちの大切さを地域で語っていきたい」。本は1470円(税込み)。全国の書店で扱っている。(山本晃一) PR情報文化・芸能
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