死因究明、5学会が反対

 「5学会が反対したというおかしな報道は避けていただきたい」―。国内の105学会が加盟する「日本医学会」(会長=高久史麿・自治医科大学長)はこのほど、医療事故の原因を調べる「死因究明制度」の創設を望む意見が多かったことを強調した上で、厚生労働省の「基本的な方向性に賛成」とする見解を発表した。同学会幹事の門田守人氏(阪大医学部教授、日本外科学会監事)は「変な報道で国民に誤解を与えることがないようにしてほしい」と、報道陣にクギを刺した。(新井裕充)

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 「死因究明制度」に関する厚労省の第三次試案に対する加盟学会の意見を集約するため、日本医学会は4月にアンケート調査を実施した。その結果、52学会から回答があり、第三次試案に基づく制度の創設に「賛成」との回答が35学会、「反対」は5学会だった。このほか、アンケート用紙に記載された意見などから、「条件付き賛成」と判断されたのは7学会、「その他」3学会、「棄権」2学会だった。
 反対した学会は、救命救急学会、日本麻酔科学会、日本集中治療医学会、日本胸部外科学会、日本消化器外科学会。

 アンケート結果を踏まえて日本医学会は6月5日に記者会見を開き、「第三次試案の基本的な方向性について賛成であることで一致した」との見解を発表した。「反対」と回答した学会に対しては、各学会長などに電話で意見を確認。「死因究明のための第三者機関の早急な設置にはいずれも賛成」で、医療安全調査委員会が設置された場合には「協力を惜しまないという積極的な意見が出された」としている。

 同学会の見解によると、反対した学会などから第三次試案に対し、「明確にしなければならない数多くの問題点が指摘された」としながらも、医師法21条に基づく「警察への届け出」や「医師の刑事訴追」などの問題を早急に解決するため、こうした学会も医療安全調の設置自体には賛成しているという。

 会見では、記者から「どの部分に賛成で、どの部分に反対か」「第二次試案に比べて、第三次試案のどの部分を評価するのか」といった質問が相次いだ。高久会長は次のように述べ、制度の各論部分は今後の課題であるとの考えを示した。
 「今までのように医師法21条に基づいて警察に届け出る体制は医療の荒廃を招くので、第三者機関をつくることには基本的に賛成だ。第三次試案では、われわれ(医療関係者)が医学的な面を判断することが明確に書かれているので、『積極的に関与していこう』ということで意見が一致した。『重大な過失』の範囲など、細かい点はいろいろな意見があったが、それはこれから現場で解決していくしかない」

 会見に同席した門田氏も医療関係者の積極的な関与を強調し、「第三者機関の設置場所など、第三次試案の中で『検討する』としている項目もあるので、今後われわれが積極的に関与して(死因究明制度を)つくり上げるという姿勢が必要だ」と述べた。

 その上で、門田氏は新制度の創設に向けて医療関係者がまとまる必要性を訴えた。
 「個人的な意見だが、いろいろな学会が意見を出すとき、『基本的な方針は賛成しているが、こういう問題がある』と表現したために、メディアに載るときには『反対している』『医学界の中が割れている』という表現になる危険性がある。わたしは、基本的な方向性については分かれていないと考える。(第三次試案を)具体化した場合の意見の違いが一部にあるということを理解してほしい」


更新:2008/06/06 17:52     キャリアブレイン

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