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「さらにお安く」斜線入り値札、禁止へ 家電業界自粛

2008年06月06日15時10分

 店頭の値札に斜線を入れ、「さらに安くします」などと買い物客の購買欲をあおる表示について、家電メーカーや量販店の業界団体が規約を改正して自粛する方針を固めた。こうした表示について公正取引委員会も「明瞭(めいりょう)性を欠き、望ましくない」と指摘していた。

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 改正されるのは、大手電機メーカーや大手量販店のほとんどが加盟する「全国家庭電気製品公正取引協議会」の自主ルールにあたる公正競争規約。7月の総会で決定する。

 斜線で打ち消す価格を表示する店が増えたことについて、業界内は「価格は店頭での交渉で最終的に決まる」との容認派と、「消費者にとってわかりにくい」とする反対派に割れていた。

 都内の家電量販店の激戦地区。テレビ売り場には、印刷された元の値札の上に、手書きの値札が重ね張りされ、さらにその上にシールが張られている。「もっとお安くします」。店員は値札の数字はまだ序の口、といいたげだった。近くのライバル店も同じ。値札に斜線を入れ、その下に「更に値引きします」という張り紙があった。

 「価格競争の激しい商品は、1日に数回も価格を変える。すべて印刷し直すと手間がかかってしまうため」

 どの店員もこうした表示をしている理由をこう説明した。

 こうした表示が行われる理由について、量販店関係者は「ライバルとの間で、単純な安売り競争になるのを避けたいとの思惑がある」と解説する。はっきりと安い値段を掲げると、他店が対抗して値を下げ、際限なく安売り競争が進み、お互いの収益が悪化する――そうした事態を避けるためなのだという。

 安く表示しておきながら高く売る行為は景品表示法が禁じているが、その逆のケースについて公取委消費者取引課は、高い看板では客を誘引できないので違法ではないという。一方で、条文には「あいまいな価格表示は消費者を誤認させる」とも書かれており、同課は「こうした表示がはんらんすればそもそも価格を表示する意味が無くなるおそれがある」と話す。

 実際、消費者からは「チラシにも斜線が入っていて、比較ができない」「店員に尋ねるのが煩わしい」という批判や改善を求める声も届いているという。

 肝心の家電業界内は、まだ賛否両論あるが、一連の指摘を受け、斜線表示をやめる方針を固め、斜線に代わる表現などの自主ルール作りを進めている。今夏ごろには、斜線入りの値札が店頭から消える見通しだ。(高田英)

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