政府支配層は、行政改革の一環として公務員に対し、身分保障の廃止、実績主義導入などの「公務員制度の改革」を導入しようとしている。それは、自治労、教組などの労働組合運動つぶしを狙い、大企業が国際競争にうちかつために、「小さな政府」実現をめざす公務員切り捨て策である。一部官公労指導部は、「模様眺め」で明確に闘う方針を提起していない。改革の本質を明らかにし、官公労働者はもちろん、民間労働者との団結もめざし、闘う方針を確立することが求められている。自治労宮城県本部、新潟県本部、佐賀県本部の各書記長に聞いた。
労組弱体化を狙う
自治労新潟県本部 斉藤 正美書記長
行革大綱が昨年出されたが、それは公務員制度改革、市町村合併、教育改革の三つが大きな柱となっている。ここをどうとらえるかが重要だ。つまり、支配層が二十一世紀の労働組合に対する支配・管理をどうするかが表れている。
その中の一環として、三月に公務員制度改革の一つの大綱が出された。したがって、その大綱だけを見るのは危険だ。
公務員制度改革は、信賞必罰も含めて基本的な流れは三つだ。
一つは、労働組合の弱体化を狙っている。とりわけ公務員労働者への攻撃、自治労、教組を狙っている。
二つめは、労務管理の強化である。これを徹底し、体制に従順な公務員をつくろうとしているのが根底にある。
そして、三つめは人件費の問題である。六百六十六兆円という国、地方をあわせた債務を削減するために、そのしわ寄せを公務員労働者に押しつけようとするものだ。
この三つがあって、各種の攻撃が出ている。だから、各論だけをとらえた議論は危険だと言っている。全体像をとらえた上で、各論を議論すべきだ。
自治労本部がいう団体交渉における労使協議制については、疑問だ。管理運営事項まで労組が入るとどうだろうか。すでにやっている民間労組などの結果は決してよくないのではないか。
だが、自治労の新綱領についても、参加型が見え隠れしており、危ぐしている。
身分保障については、本部は整理解雇四条件(客観的に見て人員削減の必要性。解雇回避の努力。解雇対象者の人選が合理的。労働者・労組と十分に協議する)をクリアすれば、身分保障について一定整理するというが、逆に言えば条件をクリアすれば首切りOKとなる。
また、短時間公務員制度についても危険ではないだろうか。労組から要求すべきことではない。労働組合が雇用や労働条件を守るのは当然のことだ。
全体として、本部の認識は甘いのではないか。これから本部見解に対して現場の声を上げることを通じて、補強していく。そうやって、全体の認識を統一し、自治労全体の闘いを構築するように努力したい。
財政赤字のツケをまわすな
自治労佐賀県本部 黒川 安秋書記長
公務員制度改革については、まずその背景を見抜くことが重要だ。政府は、「制度疲労」などというが、財政赤字の切り抜け策だろう。
そして、その財政赤字は、これまでの公共事業、ハコモノ行政の結果である。そうしてつくられた膨大な赤字を、人員削減、民営化攻撃によって乗り切ろうとするものだ。
これは、われわれ公務員に対する攻撃であるだけでなく、住民サービスの低下をも招くものである。このように財政赤字を転嫁させるのが本質だから、まず公務員制度反対の立場を明確にしておく必要がある。
また、労働組合を弱体化させる狙いもある。
労働運動の歴史をみれば、かつては炭労が闘ったが、エネルギー政策の転換で弱体化させられた。その後は、国労、全逓などの三公社五現業が民営化などでつぶされていった。そうして、百万人組織としての自治労が残った。だから、自治労の闘いの芽をつんでおこうというものだ。
さらに言えば、新ガイドライン、「日の丸・君が代」や改憲などの政治反動に対し、先頭で抵抗するのは自治労、教組などであり、根底にはその問題もあるだろう。
これから一カ月は連日、県内の全職場に入り、全組合員を対象に学習会を組織していく。学習会をやり闘うエネルギーを蓄積する。それとあわせて、県民へチラシ配布などで訴えていく。
だが、反対の闘いをやるには、やはり産別の団結と闘争が重要だ。われわれとしては、本部に対し、反対をきちんと据えて闘うように意見を述べ、本部方針を補強していく。そのためにも佐賀県本部の団結を固め、運動をさせるように奮闘していく。
条件闘争でなく反対を
自治労宮城県本部 及川 光行書記長
公務員改革について、自治労中央本部は公務員制度の改革大綱の大枠を認めた上で、そこに入って条件闘争をやろうとしている状況だ。だが、そもそも大枠自体がどうなのか。基本的に反対の姿勢をはっきりさせて、闘いを組織していくことが必要だ。われわれは、そうした方向でいく。
中央本部は、具体的な内容において、労使の協議会が設置されればなどといっているが、これまでの労働運動の流れからして、そうしたことできちんとした対応などできるはずがない。やはり、大枠において反対の立場を明確にすべきだ。
われわれとしては、具体的な中身での議論はこれからつめるが、大綱が実施されれば、さらに押し込まれる大変な事態になると考えている。だから、反対の方向で闘っていく。
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