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【主張】東京五輪招致 これからが本当の戦いだ
マラソンでいえば、中間点を先頭で通過した、というところか。これから勝負どころの30キロ過ぎが待ち受けているだけに、気を引き締めなければならない。
国際オリンピック委員会(IOC)理事会は、2016年夏季五輪開催地に立候補している7都市を絞り込む第1次選考を行い、1位評価を受けた東京はシカゴ(米国)、マドリード(スペイン)、リオデジャネイロ(ブラジル)と争うことになった。12年夏季五輪招致では、事前審査で優位だったパリがロンドンに逆転された例もある。油断は禁物だ。
ドーハ(カタール)が落選したので、アジアの票が割れる懸念が払拭(ふっしょく)されたとの見方がある。しかし、アジアは一枚岩でなく、オイルマネーを武器に台頭する中東勢はしたたかである。
ハンドボールの“中東の笛”問題で紛糾した際、アジア・オリンピック評議会会長でIOC委員のアハマド氏(クウェート)は「この問題と五輪招致とは関係ない」と語ったが、建前と本音をうまく使い分けているようにみえる。
21世紀に入り、オリンピック運動のあり方が問い直されている。五輪開催を国威発揚に利用する、という考え方は北京で終止符を打ったらどうだろうか。
東京は1964年大会の施設を再利用した「コンパクトな五輪」をうたい、環境に配慮した開催を目指している。さらに一歩踏み込んで「成熟都市における五輪」を具体的にアピールしたい。
石原慎太郎都知事が8月の北京五輪開会式に出席することを表明した。すべてのIOC委員が集まるので、存在感を示す絶好の機会となる。石原知事が陣頭に立ち、ロビー活動に汗を流すときだ。
国内に目を向けると、ライバルの3都市が70%以上の住民から開催を支持されているのに、東京は60%にとどまっている。
築地市場の移転予定地の豊洲地区から有害物質が検出されたが、移転跡地には五輪メディアセンターが建設される計画だ。対策が遅れると「環境五輪」が看板倒れになりかねない。財政面からみると、新銀行東京の問題もある。説明責任を果たさなければ、世論の盛り上がりは期待できない。
招致関係者は異口同音に「勝負はこれからだ」という。その意識を持ち続けて招致活動に邁進(まいしん)してほしい。