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社説2 大阪改革の手綱を緩めるな(6/6)

 都道府県で唯一赤字決算が続く大阪府は財政再建策を柱とする「大阪維新プログラム」を発表した。橋下徹知事が「破産状態」と指摘するように府財政は極めて悪い。就任後4カ月で対策をまとめた点は評価したいが、知事は府政改革の入り口に立ったにすぎないだろう。

 橋下知事は2月の就任早々「財政非常事態宣言」を出し、庁内のチームが4月に再建試案をまとめた。2008年度で1100億円の収支を改善するという内容だ。その後、府民や府議会などの意見を聞き、個々の政策の見直しについて知事が判断して策定したのが今回の計画である。

 試案にあった警察官定数の削減や救命救急センターへの補助金見直しは見送られた。医療費助成の削減など結論を留保した項目もある。収支改善額を試案通り維持するため、地方債を発行する。財政健全化の点では後退するが、住民生活の安全、安心という面からみると、橋下知事の判断はやむを得ないだろう。

 それでも、福祉や教育など幅広い分野で府民に痛みを求める内容だ。府の職員組合は約350億円に上る給与削減案に反対しているが、府民の理解を得るためには避けて通れまい。府議会も報酬や定数を早急に見直し、自ら身を削るべきだ。

 太田房江前知事も財政再建に取り組んだが、赤字決算から抜け出せなかった。本来は一部返さなければならない地方債を全額借り換えるという不適切な財政運営も発覚した。改革を小出しにとどめ、問題を先送りする府庁の体質は根強い。府政改革の二の矢、三の矢が必要である。

 今回、府の施設にある自動販売機の業者選定を公募入札に切り替えただけで府の設置料収入は前年の50倍以上に増えた。過去のしがらみや惰性で続けているものはないか、歳出入両面で改めて点検すべきだ。

 府と市町村の役割を明確にすることも欠かせない。住民に身近なサービスは権限と財源を併せて市町村に委ね、府は地域経済の活性化策に重点を置くべきだ。中小企業のために大規模展示会を開く構想なども今回の計画に盛り込んだが、物足りない。成長なくして財政再建もない。民間の創意工夫を引き出す府独自の経済再生策を探ってほしい。

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