ローマで開かれていた食糧サミットは、途上国への早期支援の実施などで合意する。
短期的対策では、飢餓や栄養失調に対処するため食糧援助の強化などを打ち出す。また、食糧安全保障について国際機関や政府などが協力し、中長期に取り組んでいくことになる。
食糧価格高騰の原因とされているバイオ燃料については、バイオ燃料政策を推進している米国やブラジルなどが、問題が誇張されていると強く反論した。食糧の輸出規制を導入する国が相次いでいる点についても、輸出規制の制限をめぐって、輸出国と輸入国が論議を繰り広げた。
しかし、食糧という生命に直結する問題であり、食糧サミットの交渉経過がどうあれ、実効的な対策をどう進めるのかが、喫緊の課題だ。
日本は、最低輸入義務で備蓄しているコメの放出や、途上国の食糧増産のための資金支援などを示した。他の先進国や国連機関の支援策も含め、支援を急いでもらいたい。
ただし、緊急措置は対症療法であり、食糧価格高騰を招いている構造的な問題を解決すべきだ。これは北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)のテーマでもあり、日本は議長国としてリーダーシップを発揮すべきだ。
基礎的な穀物であるトウモロコシが、米政府の政策の結果、大量にバイオエタノール用に使われるようになった。
しかし、バイオエタノール政策は、農民の支持を取り付けるという米国内の政治的思惑が背景にある。技術開発を進め、廃材や枯れ草など食糧以外の原料を利用できるようにすべきだ。
日本は飽食列島と形容されてきた。しかし、食料自給率は4割を切っており、最大の食糧の純輸入国であるという現実を踏まえて行動すべきだ。
現在の農産物貿易の仕組みは、大量の余剰農産物の存在を背景に、農業補助と、関税など輸入障壁の削減を軸に構築されている。
しかし、状況は大きく変わった。国内で余っているのにコメを輸入しなくてはならない最低輸入義務の制度についても、再検討すべきではないだろうか。
また、輸出国の市場開放要求を受け入れて、国内の農業が衰退したのに、輸出規制については何の制限もないというのもおかしなことだ。
日本としても、こうした問題点を世界貿易機関(WTO)の場で提起し、貿易ルールに反映するように努めるべきだ。
一方、食糧不足が世界的な問題となっている時に、日本では耕作放棄地が拡大しているのはやはり問題だ。自給率の向上のためにも、農地の流動化促進や農業への参入規制の撤廃など、抜本的な対策に取り組んでもらいたい。
毎日新聞 2008年6月6日 東京朝刊