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  Recoil
  May 31st - Jun 6th 2008




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The Economist 2008年5月31日号

 

石油価格
The oil price

反動
Recoil
(2008年5月29日)

痛みは伴うが、今回の石油ショックは最終的に大きな変化を促すだろう。だが、生贄にご用心

1970年代初めに石油価格が4倍になり、世界の経済活動はほぼ停止状態に陥った。アラブによる禁輸のショックは多くの国に深い傷あとを残した。米国は自動車に燃料効率基準を義務付け、フランスは積極的に原子力発電を採り入れた――日本が半そでのビジネススーツを考え出した省エネルック、言い換えると「エネルギー意識の高いファッション」は、悲しいことに着想が時代に先んじていた。

35年が経ち、石油価格はまたしても4倍になり、一時的に1バレル135ドル強と「最高値」を更新した。しかし、これまでのところ今回の石油ショックの動きは鈍い。アラブ諸国の石油ショックを武器にたとえるとハンマーで殴られたような打撃を感じるとすれば、今回のショックは万力のようなもので、産油生産の低迷と新興市場の需要の高まりが石油市場を圧縮してきた。経済が成長し続けていたため、世界は5年近くもそれを無視してきた。だが、今になってやっと痛みにたじろいでいる。

今週、フランスでは漁師たちがダンケルクの港を封鎖し、英国ではトラック運転手のデモ走行でロンドンとカーディフに入る道路は大渋滞になった。ニコラ・サルコジ仏大統領は高騰の影響を最も受けた人々への補助金とガソリン税の軽減を提案した。英国では窮地に追い込まれた政府に、ドライバーに対する増税を見合わせるよう圧力がかかっている。米国では住宅価格の下落に消費者は憤慨し――それにお金も不足している。米議会と大統領候補は、選挙運動のチラシと同じように多くの計画を立て、夏期休暇中のガソリン税の一時免税も提案した。

ゴードン・ブラウン英首相は、救済に乗り出してくれるよう主要産出国を説得できると考えている。だが、何らかの熱意を示したのはサウジアラビアだけで、ほかでは産出高の伸びは苦痛を感じるほど鈍い。それが原因で人々は苦しみ、お互いを非難しあっている。だが、これが機会をもたらす可能性もある。今はじわじわとスローモーションのような石油ショックの影響が出るのは避けがたいように見えるが、そのうちに同じようにスローモーションでももっと積極的で止められない反動が出てくるだろう。

即時再生

石油価格の高騰に多くの国――特に先進国――の経済が損なわれているのは明らかだ。ゴールドマン・サックスは消費者から石油産出国に年1兆8000億ドル以上が流れていると推定している。1970年代のような賃金と物価の悪循環は避けられたが、所得ショックはつらい。信用不足、資産価格の下落、食品価格の高騰に苦しめられ、先進国の家庭には石油代を払う余裕はほとんどない。米国は今年、国民が信用収縮に対処する一助とするための緊急刺激策として戻し減税を可決したが、戻ってきた還付金がすぐにまた取り上げられたようなものだ。

答えに窮した政治家は責任を負わせる生贄を探し続けている。リストのトップに挙がっているのが人々の苦しみから利益を得ている投機家だ。商品ファンドへの投資額は約2600億ドルで、2003年レベルの20倍になる。こういう投機的な短期資金が石油に対する需要を過剰に高めたのは間違いないのだが・・・。しかし、そう考えるのはまったく間違っている。投機家は実際に石油を所有しているわけではない。彼らが先物市場で買った石油はすべて契約が終わる前に再び売り戻される。それでペーパー上の石油の値段は上がるかもしれないが、製油所でガソリンになる黒い物質の値段は上がらないかもしれない。先物価格が高いと、将来の値上がりを期待して今のうちにと石油の買いだめに動く可能性は確かにある。しかし、現在の石油在庫は特に十分でもないし、買いだめの兆候もほとんどない。

投機家の責任ではないとすれば、記録的な利益をあげているにもかかわらず増産できずにいる石油会社はどうだろう。暴利をむさぼっていると言う人もいる。しかし、この非難も厳しい吟味に耐えられない。石油価格は市場で決まる。シェル石油やエクソンモービルなどがひそかに石油を買いだめすると、何十億ドルもの投資が活用されず、宝の持ち腐れになるだろう。石油が高いのは枯渇しかけているからではないかと危惧する向きもあるが、極端な形で「石油の産出量はピークに達した」という説を裏付ける証拠はほとんどない。中東にはまだ膨大な量の原油が埋もれているようだ。以前に比べると、どこかで新しい油田が発見されることはめったになくなり、採掘も困難になったとしても、今ならオイルサンドとシェールから大量の石油を取り出し、利益を上げることも可能だろう。

真実はもっと平凡だ。新しい油田を発見し開発するには資金と時間がかかる。ブラジル沖の海底で巨大油田が発見されたが、石油を生産するまでに10年以上はかかりそうだ。さらに、石油は思い通りにならない。産油国は価格が低いときには低コスト、ハイテクで資本も充実した石油会社を利する。だが、価格が高いときは、ロシアやベネズエラなどがそういう会社を再び追い出してしまう。同様に、石油会社が新たな鉱床を発見し生産にこぎつけるのに必要なエンジニア、調査船、掘削装置が今は高くつく。石油発見のコストが一時的に2倍に跳ね上がったのは、誰もが石油会社を求めているからにほかならない。

樽の底に希望

従って、石油ショックが和らぐには時間がかかるだろう。一部の環境保護主義者はこれを歓迎し、石油価格が3ケタ台になることは温室効果ガスの排出量を制限する1つの方法だと思うかもしれない。実際、石油はもっと節約されるようになるだろう。しかし、高値で達成できることはすべて、賢明な炭素税を導入したほうがうまくいくだろう。高値で石油消費が抑制される一方で、オイルサンド――普通の石油よりはるかに多くの二酸化炭素を排出する――が事業として成り立つようになった。利益は石油資源が豊かな国のあくどい政権に入っており、欧米の国庫には入ってこない。それに、価格が乱高下すれば、高いから行動を変えようという人々の気持ちも鈍るだろう。

この観点から見て、政府は調整を急ぐべきだ――あるいは、少なくとも調整を遅らせることはやめるべきだ。世界人口の半数は補助金により燃料価格の影響を受けていない――あいにく、それが需要を押し上げ、主に裕福層を利してきた。今、インドネシア、台湾、スリランカなどの国々が補助金を出す余裕などないことに気付き始めた。豊かな国々が燃料税を引き下げるのも道理に合わない。苦しむ有権者に現金を還元するにはもっと良い方法がある。

1970年代に、需要と供給は短期的には非弾力的であっても最終的には節約と新らたな生産につながることが示された。新しい油田すべてで生産が行われ、SUV(多目的スポーツ車)が売れ、ボイラー交換が終われば、下降サイクルが根を下ろすだろう。そのときまでには、スローモーションの石油ショックが重大な変化を引き起こしている可能性がある。ドライバーにとって今は石油に代わるものはないが、自動車メーカーが突然、電気式のハイブリッド車の販売計画を速めているのは偶然ではない。この高値ではガソリン車やディーゼル車よりハイブリット車のほうがずっと安くつくのだ。最初の2回の石油ショックで発電に石油を使わなくなった。3度目の石油ショックが功を奏し、輸送が1世紀にわたる石油への依存から開放され始めるとすれば、なんとも好都合ではないか。

 






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