◎中国の商標登録 「九谷焼」など一掃へ粘り強く
「九谷焼」「石川」「富山」など、日本の名産ブランドや地名が中国で商標登録されて
いる問題で、政府はローマで開催中の「食料サミット」で、中国側に改善要請をした。中国の商標法は線引きがあいまいで、いったん登録されると、これを取り消すのは難しいという。
青森県や鹿児島県などは、公告日から三カ月以内に異議申し立てを行うことができたが
、「九谷焼」などは既に登録済みであり、中国側の「配慮」に期待するしかない。一筋縄ではいかぬ相手だが、粘り強く交渉を続け、地元の名産ブランドや地名の乱用を防ぎたい。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査では、石川、富山をはじめ、三十府県・市の名前
が中国で商標登録済み、あるいは出願中で、地名以外でも「九谷焼」「美濃焼」などが登録されている。
中国の商標法は、広く知られた外国名や地名の使用を認めていないが、無効とされてい
るのは「東京」や「大阪」などごくわずかしかない。日本と同様、登録は先願主義のため、中国の国内法では問題はないとはいえ、ここまであからさまに日本の地名などが登録されていると、動機の不純さを疑わざるを得ない。
実際、ジェトロによると、日本の地名は商標ブローカーが売りつけたり、食の安全を強
調するために利用されているらしい。日本にも「揚子江」などの商標があり、他国の地名を登録すること自体は法的には可能だが、ブローカーが介在したり、転売目的としたものなどは明らかに問題の多い取引だろう。
経済発展が著しい中国では、安心、安全な食品に注目が集まり、日本の農産物や製品に
対する信頼性が高い。石川県や富山県は、地域産品のブランド化とともに、中国輸出の道を探っており、現状のままでは、輸出戦略にも影響を与えかねない。
石川県では過去にも「九谷焼」が中国で商標登録されていることが判明し、地元組合が
「九谷陶磁」の名称で出願したケースがある。他国の地名やブランドにただ乗りした商売を野放しにしておくようでは、国際社会の信頼は得られないだろう。
◎16年五輪招致 東京にチャンスの図式
二〇一六年夏季五輪開催地に名乗りを上げている東京が、国際オリンピック委員会(I
OC)の最も高い評価を得て第一次選考を通過した。来年十月の最終選考まで予断は許されないが、五輪招致へ大きく前進した。アジア地域の強力なライバルとみなされたドーハ(カタール)が落選したことで東京のチャンスが広がったととらえ、国を挙げての態勢づくりを急ぎたい。
招致運動の主体は都市でも、五輪開催は国家イベントそのものであり、内閣に担当相を
置くくらいの取り組みがなされてよい。IOCは国民の熱意や盛り上がり具合もみており、今後は東京五輪の意義が多くの国民に共有され、共通目標となるよう国内世論を喚起していくことも大事である。
東京都は五輪開催の理念の一つに「都市の力による新しい文明秩序の創造」を掲げてい
る。開催地の大陸別ローテーションでは二〇〇〇年シドニー、〇四年アテネ、〇八年北京、一二年ロンドンと続き、一六年は米シカゴが優位との見方がある。しかし、選考でまず問われるのは「都市の力」であり、一次選考の総合評価で東京がトップになったのは心強い。
ばく大なオイルマネーを動かし、選考レースの台風の目のような存在だったドーハが落
選したのは、五輪を開催する都市の能力にまだ不足があるということでもあろう。ドーハが姿を消したことで東京はアジアの支持を得やすくなり、最終選考に向けて有利な図式になったと言える。むろん楽観は禁物である。今後は国際的な政治力や外交力、アピール力が重要になり、もっと売り込みを上手にしなければなるまい。
八万人規模の新スタジアムを建設して開くという東京都の五輪計画に疑問を呈する向き
もあるが、五輪開催の有形無形の波及効果は計り知れない。開催地の選考自体がスポーツ界に与える影響も大きく、例えば東京開催となれば、一二年のロンドン五輪で実施競技から除外された野球、ソフトボールの復活や空手など新競技採用の道が広がる可能性があることも認識しておきたい。