株式の上場を予定または希望している岡山県内の企業は昨年に比べ五社少ない三社。調査を始めた二〇〇二年以降、過去最低の企業数―。こんな企業意識の実態が民間信用調査会社のアンケートで分かりました。
低水準の背景には、近年、世間を騒がすようになった敵対的TOB(株式公開買い付け)など上場に伴うリスクへの認識が高まっていることや、厳格な内部統制を求める金融商品取引法が施行された影響などが挙げられています。
「株式の上場はしない。なぜなら、上場すれば目先の利益を追求する株主のためだけの経営になってしまうからだ」
県内の経営者から、こんな趣旨の発言を聞いたことがあります。確かに、短期的な利益を求めるのは証券市場などマーケットの常。「上場しない」という明確な経営意思に深くうなずきました。
一方、地場企業が相次ぎ上場したり、「今度はあそこか」と上場予備軍が取りざたされていた〇三、〇四年ごろ。外面的には急成長の勢いが感じられるとはいえ、身の丈以上の業容拡大に社内の人材や力量、体制が追いついていない様子が取材を通じて露呈するケースも。“上場企業イコール一流企業”の図式が必ずしも当てはまらないのを実感しました。
上場予定や希望の企業数が低水準なのは、地域の経済レベルを示しているようで少し寂しい気もしますが、何より重要なのは個々の企業の中身。上場する、しないの経営判断を含め、多種多様な企業群がひしめき、共存している状態こそが活力の源だと思います。
(経済部・小松原竜司)