政府の社会保障国民会議の医療や介護などを議論する分科会は5日、制度改革に向けた中間報告の骨子をまとめた。日本が医療と介護に使っている経費は「諸外国と比べても高くない」と指摘。「供給体制が脆弱(ぜいじゃく)だ」と医師不足などの現状に切り込み、対策の一つに「医師養成数の見直し」を挙げた。「医学部定員の削減に取り組む」とした97年の閣議決定の方針転換を迫るものだ。
骨子は高齢化に伴って増える医療・介護の需要に対応するキーワードとして、「選択と集中」を掲げた。病院のベッド数削減や在宅医療の推進によって医療費の効率化を進める一方、医療と介護を切れ目なく一体的に提供(地域包括ケア)できるようにすることや、IT(情報技術)化の進展などに財源を集中投入すべきだとした。
病院の経営が成り立つ診療報酬となっているかとの観点を含め、診療・介護報酬体系を見直す必要があることも指摘した。医療費抑制策の下、日本の病院は設備更新の費用を捻出(ねんしゅつ)できず機能を発揮できていないとし、病院・勤務医への報酬配分を手厚くするよう促している。
必要となる費用に関しては、「安定的な財源確保」を考える必要性を強調。医療、介護サービスの将来像を示したうえで、それに必要な金額や、「どのような仕組みで、だれがどのように負担するのかを明らかにすることが必要」としている。【吉田啓志】
毎日新聞 2008年6月5日 20時04分