今回の診療報酬改定で大きな争点となった「診療所の再診料」をめぐる議論が、中央社会保険医療協議会で再びスタートした。厚生労働省が示した資料に対し、診療報酬の支払側の対馬忠明委員(健保連専務理事)は「このような資料で議論ができるのか」と強い不満を表した。診療側の西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)もこれに賛同。藤原淳委員(日本医師会常任理事)は、厚労省のこれまでの医療政策に対する考え方を提示するよう求めた。(新井裕充)
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厚生労働相の諮問機関である中医協の診療報酬基本問題小委員会(小委、委員長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)が6月4日に開かれた。この日の議題は、「基本診療料(初診料・再診料)」で、2010年度の診療報酬改定に向けた最初の会合となった。
診療所の再診料をめぐっては、「病院と診療所の格差是正」「勤務医の負担軽減策に充てる財源」などの問題が複雑に絡み合い、今回の改定では診療報酬の支払側と診療側(日本医師会)の意見が最後まで対立した。最終的に、1月30日の中医協総会で公益委員が裁定し、診療所の再診料を引き下げずに病院(200床未満)の再診料を3点(30円)引き上げることで決着。その結果、診療所の再診料は71点(710円)、病院(200床未満)の再診料は60点(600円)となり、14点(140円)だった点数差が11点(110円)に縮まったという経緯がある。
中医協が舛添要一厚生労働大臣に答申した「2008年度診療報酬改定の主要改定項目案」に、次の改定で考慮すべき主要な8項目を付記した(付帯意見)。その中で、初・再診料や外来管理加算、入院基本料などの「基本診療料」を挙げ、「水準を含め、その在り方について検討を行い、その結果を今後の診療報酬改定に反映させる」とした。
この日の小委で厚労省が示した資料は、▽初診料、再診料の考え方▽初診料、再診料・外来管理加算の点数の変遷▽診療所の診療報酬に占める初診料、再診料・外来管理加算の割合▽一般病床200床未満の病院と200床以上の病院の比較―など。
資料の説明に先立ち、厚労省保険局の原徳壽・医療課長が次のように述べた。
「2010年度の診療報酬改定に向けて議論していただく上で、付帯意見にある『基本診療料』とか、DPC、薬価の在り方が主要な項目と考えている。2010年度の改定に向けた議論は、恐らく来年度から実質的に細かく進めていくことになるが、これらの主要事項については、できるだけ今年度から基本的な認識を共有して議論をしていくことが必要だと考えている。そこで、本日は『基本診療料』のうち、初診料・再診料について基礎的な資料を用意させていただいた」
■ 「初診料、再診料の考え方」
厚労省は「初診料、再診料の考え方」と題する資料で、初・再診料や外来管理加算の点数、初・再診料に含まれるものを挙げた。厚労省が「初・再診料などに含まれると考えられるもの」と判断したのは、▽診察に当たって、個別技術で評価されないような基本的な診察や検査、処置など▽診察に当たって、基本的な医療の提供に必要な人的、物的コスト―の2項目。
このうち、「基本的な診察や検査、処置」は、▽視診や触診、問診など基本的な診察方法▽血液測定、血圧比重測定など簡単な検査▽点眼、点耳、100平方センチメートル未満の皮膚科軟こう処置など簡単な処置―で、「人的、物的コスト」は、▽人件費▽カルテ、基本的な診察用具▽光熱費▽施設の整備費―など。
原課長が資料を説明している途中で、竹嶋康弘委員(日医副会長)と中川俊男委員(日医常任理事)が同時に退席した。
質疑では、「基本診療料」に対する厚労省の考え方が示されていないことを指摘する意見が相次いだ。口火を切ったのは対馬委員で、「3か月前まで再診料について議論したが、それと同じような議論をしても意味がない」と前置きした上で、次のように述べた。
「今回が(今年度の)初めての議論になるが、(厚労省の資料の)提示の仕方に極めて不満がある。例えば資料の1枚目。『初診料、再診料の考え方』と書いてある。『考え方』と言うから、何か『考え方』が書いてあるかと思ったら、単純に点数などが書いてあるだけではないか。そして、『点数にはこれが含まれる』と。これ、『考え方』だろうか。このような資料で議論ができるのか、よく分からない。むしろ、従来の議論とは違った観点から議論できるような資料を出すべきだろう。(前回と)同じような議論をしても、頭がかっかとするばかりではないか」
対馬委員はこのように資料を批判した上で、「基本診療料」を考える際の視点を提示した。
「例えば、基本診療料と特掲診療料との関係など、体系的な視点がある。基本診療料の中でも、『基本と個別』『包括払いと出来高払い』『ドクターフィーとホスピタルフィー』という視点がある。また、『初・再診料』の視点としては、『大病院と中小病院』『有床と無床』などもある。特に、外来管理加算などは診療科ごとの特性があるだろう。『患者の特性』『急性疾患と慢性疾患』『75歳以上の後期高齢者医療制度の対象になる人とそうでない人』『患者から見た場合の分かりやすさ』など、いろいろな視点がある。ところが、きょう出された資料は『点数表』だ。つまり、医療や診療報酬をめぐる環境がすさまじく変化している中で、(基本診療料を)どうとらえていくのかという視点が極めて大事だと考える」
西澤委員もこれに賛同し、次のように述べた。
「もっと明確に『考え方』を出してほしい。初・再診料の考え方は、大きく見ると『診療報酬とは何か』という問題に行き着くのではないか。『ドクターフィーとホスピタルフィー』という議論も必要だ。われわれは(初・再診料などを)『技術料』と言っているが、実はそうでないものも多く含まれているので、初・再診料の性格をはっきりさせるような議論をすべきだ。議論の材料(資料)をもう少し整理してほしい」
これに対して、藤原淳委員(日医常任理事)は次のように述べ、厚労省のこれまでの政策に対する考え方を含めて提示するよう求めた。
「初・再診料について、(厚労省は)『技術料』という言い方をしている。外来管理加算についても、厚労省は『技術料』という言い方をしている。その基本的なところさえも明確になっていない。初・再診料、外来管理加算について、厚労省が今までの政策を推し進めてきた基本的な考えをわれわれにプレゼンテーションしてもらい、それから議論するのも一つの考え方だ。これまで、診療報酬を通じて進めてきた医療政策の考え方が現実にマッチしているのかを踏まえて議論すべきだ」
遠藤委員長は「幅の広い議論だ。多様な意見が出たが、厚労省が対応できるものと、できないものがあると思うので、議論を少し整理してほしい。要望に合う資料があれば提出してもらい、次回の議論をさらに深めていきたい」とまとめた。
更新:2008/06/05 19:43 キャリアブレイン
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08/05/23配信
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