京都大医学部付属病院(京都市左京区)は5日、脳死肺移植を受けた患者の死亡で自粛を続けていた肺移植手術を約2年3カ月ぶりに行った。中部地方の女児(6)に母親の肺の一部を移植する手術で同日中に終了、経過は順調という。今後も生体肺移植を実施して安全性を確認し、早期の脳死肺移植の再開をめざす。
女児は、気管支が狭まり呼吸が難しくなる閉塞(へいそく)性細気管支炎で、年齢のため脳死からの提供は難しく、生体肺移植を希望した。
手術は午前10時半に始まり、女児の右肺をすべて摘出、30代の母の右肺の一部を移植して、5時間半後の午後4時すぎに終わった。母子ともに経緯は順調で、母は術後に「ありがとうございました」と話したという。
京大病院は、肺移植の再開のためチームを再編。岡山大から迎えた伊達洋至教授、心臓血管外科、麻酔科の医師や看護師など約30人が担当した。
人工呼吸器をつけた6歳の子どもで、国内では福岡大での4歳幼児への手術に次ぐ年少。血液型の関係から片肺だけの移植という「簡単ではない手術」(伊達教授)だったが、「患者が待っている」と臨んだ。
課題とされたスタッフの連携について、安全管理指針で役割分担を明確化した上で、術中に声をかけ合うなど慎重に手術を進めた。南正人大阪大准教授(呼吸器外科)が外部評価のために立ち会い、「連携は良好で、綿密な安全管理が行われた」とコメントした。
伊達教授は「常にスタッフに話しかけるように心がけ、チームとして機能した。移植は術後管理も大切で、元気に退院できるよう努力したい。脳死肺移植も早期に再開したい」と話していた。
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