中国・四川大地震

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

四川大地震:決壊恐れ無人の街…せき止め湖下流域 

せき止め湖となっている唐家山ダム下流地域で見られる三分の一の決壊で水位がここまで上がるという警告マーク=中国四川省綿陽市の游仙区で2008年6月2日午後5時42分、木葉健二撮影
せき止め湖となっている唐家山ダム下流地域で見られる三分の一の決壊で水位がここまで上がるという警告マーク=中国四川省綿陽市の游仙区で2008年6月2日午後5時42分、木葉健二撮影

 【綿陽(中国四川省)鈴木玲子】商店はすべてシャッターを閉じ、銀行やビルの前には積み上げられた土のう。巡回する警察車両だけが目立つ。中国・四川大地震でできた最大のせき止め湖、唐家山(とうかさん)ダム(四川省北川県)の下流域。ダムの強制排水を目前に、「ダム決壊」に備える街からは市民の姿が消えていた。

 綿陽市東部の游仙地区。同区を含む綿陽市民約21万人は3日までに、当局の命令で高台などへの避難を終了していた。地震の土砂崩れで川が埋まってできた唐家山ダムが決壊すれば、綿陽市内には4時間で洪水が到達。とりわけ、ダムから通じる※江(ふうこう)沿いに広がり、約80キロ離れた低地の游仙地区には、真っ先に洪水が押し寄せると予測されている。

 同区の電柱やビルのあちこちに、洪水が押し寄せてきた場合の「予測水位」が記されている。3階建ての役所庁舎の壁にも、赤色のペンキで真新しい3本の線が描かれていた。

 唐家山ダムが3分の1決壊すれば、洪水は地面から約2メートル、2分の1ならビルの2階部分まで、最悪の全壊なら3階部分まで達する。「半壊」でも一般の民家なら完全に水没してしまう。

 行政機能は避難地域へ移され、庁舎には警官のテントが並ぶ。高級マンションの前には雇われた男性警備員が1人ぽつんと立っていた。それ以外はすでに「無人の街」と化している。

 唐家山ダムからの排水路の掘削工事は終わった。ダムの水位が排水路の高さまで上昇すると、自然に下流へ流れ出す仕組みだ。3日中にも自然排水が始まる。

 綿陽市などは「自然排水で危機は免れる」と説明する一方、全面決壊を想定し、下流住民130万人の避難訓練も実施した。

 警察官の一人は記者に険しい表情で叫んだ。「みんなとっくに避難した。君たちもここに長くいてはだめだ」

 ※ さんずいに「倍」のにんべんのないもの

毎日新聞 2008年6月4日 2時30分(最終更新 6月4日 2時30分)

瞬間ベストセラーランキング

【本:旅行・留学・アウトドア】の売れ筋商品!

中国・四川大地震 最新記事

中国・四川大地震 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報