「『約7割の世帯では減った』と言われても納得がいかない」。福岡市の男性(78)は妻(75)と2人暮らし。後期高齢者医療制度に変わり、保険料の負担は国民健康保険料と比べて年間約6万5000円も増えた。
男性の昨年の国民健康保険料は世帯ごとに徴収され、妻と合わせて約20万円だった。後期高齢者医療になって個人単位の徴収となったため、男性は年約21万7000円、妻は年5万円余がそれぞれ年金から天引きされる。世帯でみると、保険料の負担は計27万円近くにはね上がった。「現役世代の負担を軽くしなければならないのは理解できる。でも、こんなに上がるとは」
夫婦で月三十数万円の年金収入があるが、妻は30年前に脳卒中で倒れて重い障害があり、介護保険の一部負担金は月約8万円に上る。男性は「2年後の改定で保険料は確実に上がる。老老介護で慎ましく暮らせば生活できると思っていたが、見通しが立たなくなった」と不安を隠さない。
与党は3日、年間の年金収入が基礎年金水準(80万円)以下の人の保険料を9割減額するなどの負担軽減策に合意した。しかし、男性は「手直しで済まそうとするのは、高齢者の実情を深刻に受け止めていない証拠。自民党をずっと支持してきたが、もうできない」と憤る。【柳原美砂子】
毎日新聞 2008年6月5日 西部朝刊