【イビチャ・オシム氏アドバイザー就任記者会見】オシム氏、田嶋幸三氏コメント [ J's GOAL ]
イビチャ・オシム氏のアドバイザー就任記者会見が行われました。会見でのイビチャ・オシム氏および、田嶋幸三 財団法人日本サッカー協会 専務理事のコメントは以下の通りです。
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●イビチャ・オシム氏:
「なにをいったらいいんでしょう・・・向こう側の世界まで行って戻ってきました。私の復帰に対して激励を寄せてくれた皆さんに改めて感謝します。私もプロとしてやらなければならないと思う努力をして戻ってくることができたので、マスコミの皆さんにも努力をしてもらいたいと思います。こんなにたくさんの記者が来るというのは誰も言ってくれませんでした。もう少し顔の化粧でもしてくればよかったですね。
それはともかく、人間だれでも人生のなかでこれだけはしたいという希望があるものです。それがあったからこそ私は向こうから戻ってこられました。つまり、私がやり始めた仕事を完成できなかったという想いが私の復帰を後押ししたということです。
私だけではなく、生きている人間なら何かをやり遂げたいという希望や目標があって当然です。私が日本代表の監督を引き受けたとき、日本をワールドカップに導くのが最低限の仕事だと思っていました。まぁそれだけでは十分ではないですが。もっと大きな希望もありました。それについていつも夢を見ていました。でも、夢の中身は教えません。あまりたくさんの夢を見すぎたので、この場で言うには時間が足りませんから。
そのうちのひとつは、日本サッカーは日本人の力でもっとよくすることができるということです。それをうまく活かすことができれば、世界チャンピオンになることも夢ではありません。それは大きすぎる夢かもしれませんが、夢を見るのはいいことです。少々時間はかかるかもしれませんが。しかし、その夢が本当のものになればいいと今は思っています。
最初に言わなくてはいけないことを忘れていました。
私をアドバイザーとして要請してくれたことに感謝します。日本語はあまりできないんですが、覚えた言葉の中に『がんばれ』という言葉があります。今度は、私が皆さんに『がんばれ』という番ですね。がんばらなくては前進はしません。
その際に忘れてはいけないのは、サッカーはただ戦えばいいというものではないということです。ある種の知識、技術を身につけなくてはいけません。美しいサッカーをしたければ特にそうです。世界にはたくさん紛争や戦争がありますが、サッカーだけは戦えばすむというものにはしたくないんです。
ただし、アドバイザーを引き受けはしましたが、こんなにカメラマン、記者がいるのをみると荷が重い気もしてきました。というのは、(記者の)皆さん全員にアドバイスを送るには、私一人では足らないと思うからです。ジャーナリストひとりひとりが日本サッカー協会にとってのアドバイザーです。でもその数は少し多すぎるかもしれません(笑)。
いずれにしても、私ができる限りのことをしたいと思っています。約束できるのは私ができる範囲で、ということですけどね。もうすぐEURO2008があるため帰りますけれど、できるだけ多くの試合をみて、そこでおこっているサッカーの新しい発見があれば、それを見逃さないようにしたいと思います。
ジャーナリストの皆さんのなかからも、私の闘病中に激励をいただきました。改めて御礼を言います。
私は日本サッカーの日本化を掲げて仕事を始めたわけですが、今その望みは後任の方に引き継いでもらいましたので、今後は日本のチョコレートの日本化にでも取り組もうかと思っています(笑)。というのは、EURO2008のホスト国のひとつがチョコレートで有名なスイスだからです。だからお土産はチョコレートにしようと思います。ちょっと話しすぎましたね。ごめんなさい」
Q:監督をやってみたいという気持ちはある?
「私はどんな場所にいてもサッカーの話をするのが大好きです。どんな仕事をするにしろ私は日本に来た痕跡を残したいと思っています。それはどんな分野の人でも同じことでしょう。ひょっとしたらひどい痕跡を残しはしないかと心配してますが。(要請を)引き受けたのは、何かよい方向に変化を与えようとしたからです。やってもいいかと天国の誰かに相談したのではなくて、自分の考えで変化を与えようと思って決めました。
私自身(病気は)予想していませんでした。残念ですが病気になってしまい(監督を)続けることができなかったので、その分、別の形で貢献をしたいと思っています。以前ほどではないかもしれませんが、皆さんの前でこうやって冗談も話せますしね。ですから、みなさん私が申し上げている、一つ一つの単語について全部をシリアスに受け取らないでください。
夢についてですが、夢を見ることは禁じられてはいないわけですから、夢をみたっていいでしょう?皆さんも夢をみるでしょう?その(夢の)方向がそろっていけば日本サッカーは前進するのではないですか?そこから変化が始まるんだと思いますよ。そろそろ(カメラの)フラッシュをたくのは控えてもらえませんか?まぶしくなってきました。
オファーに対して感謝していますし、信頼してくれていることを嬉しく思います。(サッカー協会と私のなかで)信頼関係があるということ。やりかけた仕事の一部を続けさせてもらうということです。これまで私がやったことの痕跡がこれだと示すには、余り時間がありませんでした。しかし今後は、別の方向でポジティブに変化を与えていきたいと思っています。そこで何かよくやったといってもらえるならそれほど嬉しいことはありません。
新しい仕事は新しい責任です。その(仕事の)うちのひとつは引き続き健康であり続けること、リハビリも含まれていると思っています。それは、ただ命を永らえるということではなく、良くなるということです。人生はずっと戦いの連続でした。選手時代は相手選手と、監督時代は自分のクラブの選手と、そして、代表監督になってからは記者の人たちとです。負けたとは思っていませんよ。まだまだ心臓が動く限りは戦い続けます」
Q:日本選手に今足りないと感じていることは何ですか?
「言いたいことがたくさんありすぎます。そんな単純なものではありません。一般論で話しますが、第一に日本選手はもっと走らなければいけません。いいサッカーをするためには走る量を増やさないといけない。一般に日本の選手は技術があると思われているけれども、それには?がつきます。つまり、技術のレベルをあげなくてはいけません。
そのためには、小さい時期から動きながらのプレーをもっと習得しないといけません。現代のモダンサッカーの方向というのはスピードアップです。それに伴って考えるスピードを速めること、走るスピードを速めることが最低限必要です。早いプレーを可能にするためには、もっと高いレベルのテクニックを身につけなくてはなりません。これはあくまでも一般論ですよ。
皆さん難しく考えすぎているのではないですか?サッカー強国がなぜ強いかということを分析をしすぎていませんか?そこでイミテーションを繰り返しても、彼らを超えることはできないでしょう。まねをするのが良い方法ではありません。ですから、日本はコンプレックスから開放されて、自分たちのストロングポイントを自覚することです。
先日のトゥーロン国際大会でU-23日本代表はフランスやオランダに勝ったでしょう?あの方法でいいと思います。あれがひとつのサインです。あれを見習うべきですね。つまり、できるんだということ。強いチームといい戦いができるんだという自信をつけることです。もちろん相手をリスペクトする必要はあります。しかし、サッカーは演劇と違ってあらかじめ勝者が決まっているわけではありません。また話すぎてしまいましたね・・・」
Q:Jリーグを見て印象は?
「(Jリーグを)見てはいけませんか?先ほど言ったように、病気から復活できたのはサッカーのおかげです。私が何者であるかを忘れないために試合を見に行きました。サッカーが原因で病院にいかなくてはいけなくなりましたが、(病院から)戻るのもまたサッカーの力でした。だから見に行ってもいいでしょう?サッカーを見ることが私の生活の復帰の手始めの活動です。
印象については少し前にいましたよね。私の話をきいていましたか?耳に入っていても頭で理解していなくては同じですよ。つまり、走りが足りない、走らなければいいサッカーはできません。それにいい技術がなければ早いサッカーはできません。そこを改善することが、進歩というより、日本サッカーが生き残る道でしょう。まず走ることです。
そこで残念なのは、日本サッカーの中には、上手な選手は少ししか走らなくていいと考える傾向があります。それは逆ですよ。テクニックのある選手はたくさん走ればもっとよくなると考えてはどうですか?そこから直していきましょう。だからといって、そういうサッカーを許している監督を批判していると書かないでくださいね。監督を批判しているのではなく、走らない選手を批判しているんです。
(カメラマンにたくさん写真を撮られて)生まれてこのかた、撮られた写真の枚数よりも今日一日で撮られた枚数のほうが多いと思います。カメラマンがこんなにくるのなら違うネクタイをしてくればよかったです。皆さん(会見に)来てくださってありがとうございます。たくさんの方々が来てくれたと言う事は、リハビリをもっとがんばれということだと勝手に解釈します」
●田嶋幸三 財団法人日本サッカー協会 専務理事:
「こうやってアドバイザー契約を発表できることを嬉しく思う。皆さんに心配をかけたが、病院、関係各位の努力で回復したことは驚いていることと思う。本人の努力、家族の支えでここまで回復できた。皆さんに感謝したい。今回の契約を結んだことで我々協会、サッカー界に意見をいただければと思っている。具体的な契約は指導者養成、ユース育成、フリーな立場で、海外のさまざまな情報を入れてもらえるように、力を借りたいと思っている」
Q:期待する点というのをもう少し具体的に。代表チームに帯同してアドバイスする仕事はあるのか?
「帯同するということは契約に入っていない。今日会見で聴いた話だけでも僕らにとってアドバイスになっていると思っているし、EURO2008を見てもらい、(活動の拠点は)向こうがベースにはなるが、アンダー世代が常に(遠征に)いくので、会う機会があればコメントをもらいたいし、S級の養成をおこなっているが、そのなかで経験を話してもらえればと思っている。健康を第一に考えて、その中の範囲でお願いしたいと思っている」
以上