市民社会フォーラム共同企画要旨
田中優さんを囲む会
NPOバンクの可能性について

■日時 06年7月1日(土)19:00〜22:00(開場18:30)
■開場 サロン・ド・あいり(神戸)
主催 「ザ・コーポレーション」上映&田中優講演会・神戸実行委員会

※参加者からの田中優さんへの質疑応答・意見交換をまとめました。

なぜそこまでエネルギッシュにできるのか?
よくきかれるが、非常に簡単。「やらされること」はうんざりで疲れる。「自分からやること、好き
好んでやること」は疲れない。それだけ。自分のやっている活動は好きでやっているので疲れ
ない。遊んでいる子どもが疲れるはずがないという感じ。
 やらなくてはならないことがあれば、それを全て組み替えて、自分が楽しんでやれるという形
にできなければ、やらない。うんざりするような活動だったらやらないことに徹する。わがまま勝
手にすればまず疲れないので、エネルギーは出てくる。いかにすれば自分がやる気になるか
を中心にするのが重要なポイント。

どうやったらお金が集まるか?
 社会の中には「行政(Government Organization)」とそれ以外の「非行政(Non Government 
Organization)」、さらに非行政には「企業(Profit Organization)」と企業以外のすべての「NPO
(Non Profit Organization)」と3つのセクターがある。行政と産業がGOとPOとすれば、もう一つ
のセクターはNGOでありNPOとなる。Third Sectorや市民セクターと言われる。
 この3つのセクターは同じことを必ずできる。例えば企業が保険会社をやっているが、行政で
も市民でも保険ができる。保育園にしても企業がヤクルト保育園や24時間保育園などをやっ
ていれば、市民は市民共同保育所を自分たちで運営することができる。郵政の船は行政がや
っている。民間では三井商船が世界一周の船旅をしていれば、三番目のセクターはピースボ
ートになる。どんな事業でも3つのセクターで成り立つが、日本では三つ目の市民セクターがま
だ弱い。
非営利でありながらビジネスをやるのが大事。営利と非営利の境目は、得られた利益をどこに
戻すかだけの違い。利益が得られて株主に配当するのは営利、利益を長期的目的のために
投資する、もしくは自分たちで必要と思うところに寄付をするのが非営利。給与や人件費は必
要経費。だから給与を受け取りながら非営利のビジネスを作っていくことが、これからの社会
に必要なことだと思う
 実は昔の日本企業のパターンは非営利で、得られた利益を地域に還元していた。例えば昔
のナショナルはオイルショックで経営危機に陥った時、全従業員に土地を買って会社をたたも
うとしようとしたぐらい。従業員や地域のための企業がたくさんあった。今の企業は営利をどん
どん進めているが、営利企業でも非営利のビジネスができるモデルを示すことも重要。
 企業は儲かれば株主に配当するが、非営利ビジネスは長期目標に投資する。だから同じ規
模で同じビジネスをやれば、非営利ビジネスが必ず勝つ。まずは非営利ビジネスをビジネスと
して食っていけるようにすれば一番いい。そこで働く人は霞を食って生きていくわけにはいかな
いから給料をもらうが、公務員ベース以上だと批判がくるから、それが上限になるだろう。これ
は必要経費であって利益ではない。ボランティアはタダでなければと勘違いされるが、きちんと
生活を成り立たせる給料はとるべき。そういうビジネスのスタイルを作っていくことが必要。

虚業としての未来バンク
 未来バンクは実業ではなく虚業。例えば、ほかの人が自然エネルギーやまちおこしなどで頑
張っている人が実業。我々はそれらにお金のサポートをしているだけ。実業をプレイヤーとす
ると、未来バンクはインフラ。プレイヤーばかり増えすぎると先に行かなくなるので、それぞれ
のプレイヤーが動きやすくするインフラ整備をする必要がある。インフラ整備を市民自身が作
っていくことで、行政に楔を打ち込み、プレーヤーが行政に恣意的に動かされることがないよう
にすべき。
 非営利バンクはなぜか東に伸びていくが、西には伸びていかない。最近は名古屋に若者だ
けのバンクができたが、それ以外は関東以北にある。我々「NPOバンク」以外では、岩手信用
生協はサラ金地獄にはまった人に対する融資だけをやっているバンクがある。生協法上、カネ
の生協を作ってもいいはずだと作ったもの。今、十数億円を運用している。サラ金苦で自殺し
ようとする人を救っている。同様のものが生活クラブ生協によって東京に、グリーンコープによ
って福岡に作られつつある。クリスチャンのグループがサラ金対策につくった「日本共助組合」
も日本全国で活動している。

市川市の公益信託1%運動
 千葉県の市川市がやっている公益信託1%運動は非常に面白い。市川市役所の税収の
1%は市民が何に使うかを直接決めてもいいという考え方だ。99%のお金は議会が決めるに
しても、1%は市民が決めてもいいだろう、それをNPOに寄付するが、どこのNPOに寄付する
かは住民の直接投票で決める。そのためにNPOは駅頭に立って「私たちはこんな活動をして
います。うちに1票入れてください」と訴える。NPOは通常、ほとんどが内向きの組織なので、関
係ない人に訴えることがほとんどない。「こういう問題があります」とは言うが、「自分たちはこう
いうことをしています」とはあまり言わない。1%条例のおかげで、NPOが駅頭でアピールする
ようになった。市川市では、「うちの市にこんな活動をしている人がいたのか」とものすごく広が
るようになった。いまだに1%全額は使われていないが、とても存在感がある。
 これは市役所に打ち込む楔だと思う。市役所は首長などに莫大な権限があるので、くだらな
いものを造ったりする。そこに楔を打ち込んで1%は使っちゃダメだよという効果がある。何に
使うか、何に使えないのか、使うにはこうしなければと楔を打ち込むのは、「虚業」として重要。
市川市の公益信託1%運動は、住民自治としてとても素晴らしい。

中間法人について
 最近できた中間法人という非営利の枠組みがある。これは有限会社とそっくりにつくり、法務
局に届けるだけ。NPO設立のような認証も必要がないので作るのが簡単。有限会社と一点だ
け違うのは、利益が得られたときに株主に配当してはいけない、長期投資に使わなくてはなら
ないということだけ。
 NPOの重大な欠点は乗っ取りが簡単にできること。会員が100人ぐらいしかいないのに、2、
3億円持っているところがある。年間会費が1万円だったりする。そうすると100人で100万にな
るが、ひとりで101人集めて101万円払って登録すると、総会で緊急動議を出して100人の委任
状を持って自分が代表になり、乗っ取ることができる。NPOは金を使うには全く向かない組
織。金が関わるところでNPOをやるのは危険。
 金が関わるNPOならば、中間法人と二本立てにする。非営利ビジネスをやるならば、中間法
人の枠組みを使ってやるのがましだ。
 NPO法人があるのに、なぜ中間法人という仕組みができたか、実はばかばかしい事情から
生まれた。卒業生の同窓会の中には政治力が強く、自民党を支持しているものもあるが、そう
いうものには法人格がなかった。「NPOの連中が法人格を取れるのに、俺たちが取れないは
おかしい」と怒り、そこで作り出したのが中間法人。もともとは同窓会向けだが、使ってみると
結構使い心地がいいので、今は市民側が圧倒的に使うようになった。
 小林武史さんやミスターチルドレンの櫻井和寿さん、坂本龍一さんが創ったAPバンクも中間
法人。NPOではいろんな人が入れてしまい、彼らのプライバシーが漏れる心配があったから。
事業を持つNPOでは、最近は中間法人を持つことが多くなった。
 日本には9つの電力会社があってそれぞれと送電線が繋がっている。繋がっているところの
管理をどうするか。利益のことなどややこしいので、中間法人を使っている。調整にややこしい
場合は、利益に関わらなくするため中間法人を使っている。設立が簡単なので最近は企業が
金に関わらない部分でよく使っている。
 インターネットで「中間法人」と検索すれば、作り方がずらっと出ている。非常に簡単で届出だ
けですむ。今後法律が変わって、中間法人はあと1、2年でなくなり次の枠組みに代わるが、す
でに中間法人をとっていれば既成事実化するのではないか。有限責任にするには有限会社と
同じで、300万円の基本財産があれば有限責任中間法人にできる。NPOのように無限、また
は無責任ではない。300万円以上の袖は振れないということができる。
 NPO法人は実はリスクが高い。自分たちでピクニックを企画したが、たまたま医者の息子が
監督不行き届けでケガして死んでしまったとしたら、何億という負債を抱えてしまう。そういうと
きに有限法人ならば、300万円以上はない袖は振れませんといえる。
 300万円なかったら、無限責任中間法人が作れるが、あまりメリットはない。
 
非営利バンクは銀行法や出資法上、問題はないか?
 非営利バンクは銀行法などと一切関わりはない。貸金業法、低利のサラ金の一つとしてやっ
ている。初めて貸金業協会に届出したとき、相手にしているのはサラ金だけなので、「非営利
でやるのは無理な話で、分からない」と言われた。結局、都職員に問い合わせたら、「ああでき
ますね、私から貸金業協会にOKといいますね」ということになった。今はいくつもできているの
で、以前ほど難しくない。
 金融庁は証取法を見直し、今度は金取法(金融商品取引法)というのができ、何と我々のよ
うなところも規制するということで、公認会計士を雇って監査をしなければならないことになりか
けた。まともにやったらその経費だけで年間1千万円ほどかかるので、10年ほどで出資金がな
くなり潰れてしまうことになる。そこで「NPOバンク連絡会」というのを創って、いろんなNPOバ
ンク同士で集まって金融庁と交渉してきた。その結果、と我々の扱いが金融庁の報告書に記
載され、「いわゆるNPOバンクは規制しない」ということになった。
 非営利なので配当は出さない。出資した人には、貸し倒れで損することはあるが、得すること
は絶対にない。「誰がそんなものに出資するのか」と思いきや、意外と入る人は多い。未来バ
ンクは全然PRしていないのに、すでに1億7千万円も出資金が集まり、むしろ集まりすぎて困
っている。「しばらく出資しないでください」と抑えている状態。金が集まり過ぎると無理やり貸さ
なければならないというプレッシャーが出てくるので、出資金を減らすことにした。とくに東京で
は、未来バンクのほかにもAPバンク、生協のバンクなどあちこちで非営利バンクができて、過
当競争状態なので、私たちはもうフェイドアウトを考えている。

未来バンクはなぜこんなにきっちり運営できるのか?資金もほとんど回収でき、億の
金を持っているが、未来バンクは事務所を持たず専従スタッフもいないそうで。日常的な
決裁をメールでやっていて合理的。敷居の高そうな事業だが、やろうと思えばやれるとい
う工夫があれば。
 人件費を抱えると無理な事業をしなければならなくなる。NPOは何かやりたいことがあってや
ってきたはずなのに、いつの間にかNPOを維持するためのNPOになっていく。未来バンクは
固定金利年3%でまわしている。1億円まわすと年300万円になる。いろんな経費を抜いていく
と、人件費に支払えるのは150万円くらいになり、引当金は全然たまらない構図になる。人件費
を入れた途端に苦しくなるから、人件費ゼロで考えて続けている。
NPOと営利セクターとどこが違うかというと、NPOはノウハウがあると知ってくれと広めたが
る。企業の場合は極力隠そうとする。我々のところもとにかく真似されたがっている。同じ仕組
みで各地に設立してもらいたい。
 返済がきちんとできているのは、第一に審査が厳しいから。メンバーには現役の金融マンが
いるので、審査するとたいがい貸すのは無理だという話になる。で結局貸すのには、この人は
信頼できる人か、事業は本当に健全か、資金の流れを見てきちんとペイできるようになるかを
睨むことになる。

金貸し業に必要なことについて
 3つある。一つは会計がきちんとできること。誰でもいいから最後の1円まで合わせる几帳面
な能力を持っていること。もう一つは法律に詳しい人がいるということ。例えば債務者が亡くな
った場合、保証責任はどうなるか。連帯保証人に相続されるものか、そういうことを分かってい
なければならない。法律に強い人に関連する法律を読んで勉強してもらえればいい。三つ目は
審査の能力。公認会計士は大手事業者向けなので実態に合わない。中小零細はほとんど税
理士しかやらない。NPOは超零細だから、税理士のノウハウの方がいい。税理士は意外と巷
にいるので、関わってもらえると便利。審査をするときに、この事業は健全なのか、あちこちで
隠れた資金の流れを作っていないか、そういうのを見抜かないといけない。NPOといえども嘘
のデータをつくったりする。自転車操業じゃないかと睨まないといけない。
 最低限必要な能力は、お金を1円まできちんと合わせること。あとはアウトソーシングできる。
ほかの人に頼める。未来バンクには会計や法律に詳しいメンバーがいた。
 返済がきちんと返ってくるもう一つの理由は、互いの信頼に基づいていることが大きい。「信
頼の年輪」と呼んでいる。大借金を抱えている人が宝くじで大金を当てたら誰から返すか。ま
ず、すごく親しい人。次に家族。その次がもしかしたら信用金庫・信用組合。それでもお金があ
ったら都市銀行。最後に自治体という順番。自治体への返済率は6割前後しかないので、自
治体が貸したら焦げるのは当たり前。だからNPOバンクが自治体から協力を受けると危険。
「自治体が協力しているのなら踏み倒しても平気」となってしまう。自分で身銭を切ってでもやっ
ていると知らせれば、むしろ「かわいそうだしな」と感じて返済してもらえる。
 しかし、それでも事業を失敗するところが出てくる。シビアな問題だ。
 なぜ焦げついたか調べると、何度も貸していて安心しているところに、連続して貸していたた
めに、ある時焦げつく。なぜなら、きちんと返そうとやっていて、事業を継続してやっていても、
NPOであれ企業であれ、いずれ潰れるときが来る。潰れるときにたまたま貸してしまうと焦げ
る。継続的に貸しているからといって必ずしも焦げないわけではないので、毎回チェックをする
よう心がけている。
 あと遠いところが焦げる。遠方に貸しているところが焦げつきやすい。近くにいれば情報も伝
わるし、責任感も強くなるが、遠方ではそれがない。遠くに貸すのは得策ではない。バンクその
ものはなるだけ小さく地域に戻していく方針だが、未来バンクは少し前まで、全国にたった一つ
しかなかったので全国に貸していた。今は縮小していく努力をして、なるだけ地域に帰ろうとし
ている。地域に帰ると「そろそろやばい」などの情報がはっきりと聞こえてくるので失敗しにくくな
る。
 焦げついた後も、おもしろいことにNPOはみんなで資金を出し合って焦げつきをなくそうとす
る。民間企業が潰れた時とここが全然違う。民間企業が潰れたら皆逃げるが、NPOが潰れた
ら「かわいそうに」とみんなでカンパしようとする。

グループ内のフォーメーションとファシリテーター
 私はデータマニアで、調べるのが大好き。何であれグラフを見たくなる。でもグループの中に
は一人だけいれば結構。私は運動をする中でいくつか原則を持っている。「信頼できる人とし
か運動をしない」。仲良しグループが良くないと言われようが、信頼できる人としか運動をしな
い。だから信頼できない人がいたら排斥する。「お前を信用できないから出て行け」と。昔の左
翼運動は目標が同じだから、一緒にやれるはずだと考えて失敗していった。その逆をやる。
 あと、「お互いに運動を制約するぐらいならグループでやらない方がいい」。お互いにもっと自
由に、より活動的にやれるためにグループを作ったはずだ。お互いに「それは良くないよ」と制
約するようになるなら、団体でせずに個人で活動した方がいい。各人がネットワークを使って能
力や可能性を高めていくことが重要で、グループであることが必要なのではない。
 不思議なことにグループでやると、能力がある人がどんどん生まれてくる。お互いの能力が
ブッキングしないように「俺はここをやろう」と、サッカーの布陣のように「俺はディフェンスをや
ろう」「オフェンスをやろう」とさりげなく自分の居場所をつくってフォーメーションができていく。そ
れは楽しい体験だ。
 「足元から地球温暖化を考える市民ネット・えどがわ」(足温ネット)では、「エコエコ省エネゲ
ーム」というのをつくっている。日本で一番不足している役割はファシリテーター。司会者はいく
らでもいるが、皆を元気にしながら活動を進めるファシリテーターはほとんどいない。ゲームを
やっていく上で重要なのもファシリテーター。うちのグループにファシリテーターをやってくれと依
頼が来る。
 足温ネットは「鵜匠」をしている。3万円で仕事を引き受けてその三分の一の1万円を会に寄
付してもらっているので、会は毎年黒字を更新している。

地域通貨について
 人は役割を持っているから生きていける。その役割をどう持たせるかが重要になる。地域通
貨というのは役割を持たせる意味では重要なツールではある。
 ただ欠点もある。地域通貨が経済的に成り立つのはインフレの時だから、今の日本のように
デフレでは経済効果が出ない。逆に役割を持たせることには効果的かも知れない。
 私が10年理事をやっている日本国際ボランティアセンター(JVC)は、発展途上国の支援をし
ている。その中で、タイの朝市は成功している。とても貧しい東北地域では、農作物をバンコク
から来たバイヤーに売って、生活必需品はそのバイヤーから買っていた。つまり売る時に収奪
され、買う時にも収奪されていた。そこに朝市を入れたら、地域の人のお金が減らなくなった。
朝市は国家通過を使った「非貨幣経済」の仕組みだ。商品を担いでいってほかの人の商品と
交換して持って帰る。物々交換しか行われていない。商品の尺度を測るために国家通貨を使
っているにすぎない。日本でやっても効果がある。
 地方に行けば「道の駅」があるが、あれはNPOが創った。そこで朝市をすることができる。そ
うすると地元の産物が売れて、それで別の人の産物を買うことができ、地域の経済が潤う。最
初は地域の人に売るのは照れるので、子どもやおじいさんおばあさんがやって、後から若い人
もやるようになる。社会的弱者と言われる人々に役割を与える効果もある。
 未来バンクの将来にあるのは、金に頼らない社会を創ること。お金を使ってお金に頼らない
社会をどう創っていくかを考えている。お金に頼らなく生きていけるのが一番いい構図だと考え
ている。自然エネルギーで電力会社の電気を買わなくて済むし、地域の農業で食べられれば
よそから買わなくて済む。そうすればお金に頼らなくていい部分が増えてくる。それを最終的に
は生活全部に広げていきたい。そうすれば、「ブッシュさんから石油を買わなくてもいい、僕は
太陽光発電をしているから」とブッシュを追い返すことができるようになる。
 こうしたことに必要な役割を当てはめて、自発的に役割にはまっていってもらうこと。それをう
まく仕組みにしていくことが大事だ。

市民活動家のまわりにサポーターが少ないので、どのように結び付けたらいいか?
 1999年のブラジル会議を契機に世界は変わった。NPOに普通の人がかかわってくれるムー
ドになった。
 NGOの中に「金融と環境の研究会」を立ち上げて、そこでいろいろ研究してみようよというこ
とにした。何かをテーマにした研究会は意外と楽しく、いろんな人が来てくれて、そこから能力
がある人が出てきたりする。
 あとは人とNGOをどうつなぐか。ホワイトバンドやキャンドルナイトをやったマエキタミヤコさん
が市民運動に関わるようになると、どんどんいろんな人が関わるようになった。広告というツー
ルを持っている人にやってもらったことで、鉱脈をあてた。
 NPOは、事業をどう見せるかに集中した広報活動が弱いので、もっと真面目に取り組んだ方
がいい。電通の広告ウーマンでいろんな賞をとっているマエキタさんによれば、「NGOは広告
をタダだと思っている。広告とは外にいる人にどうみせるかということだから、そこにお金を惜し
んではいけないし、お金がかかることがわからないといけないし、時間をかけなければならない
ことを理解しないといけない」と。お金と時間をもうちょっとかけれなければいけないと思う。NP
OやNGOに参加する人は能力が高い人が多いので、たまたまそこを考えることがなかったの
だろう。広告というアウトプットの戦略をたててやればうまくいくようになるだろう。
 そうすれば関わってくれる人も増えて、「あそこの団体はなぜあんなにサポーターが多いの
か、宣伝がうまいから、じゃあ俺たちもうまい宣伝をしよう」ということになる。まずどこかが広告
について真面目に考えるようになればいいのでは。
 
NPOにもいろいろがあるが、市民のためのNPOをどのように見分けるか?
 まともでないNPOは多いと思う。途上国の開発支援では特に。開発支援という名目でODAと
会社から数十万円もお金をもらって、途上国から来た人にはタコ部屋に放り込んで数千円しか
払わないようなNPOもある。
 サポートする人がプレイヤーを選べばいい。まともでない団体をNPOだからと形式的に認め
たら、みんなNPOになろうとする。そういうことを許さないように支える側が選別をしていくこと
が大事。例えば、未来バンクが貸したか貸さないかによって、一種のステータスになっている。
未来バンクはかつて融資の問題はプライバシーの問題だから、どこに融資したかは一切明か
さなかった。ところが借りた側は、「私たちは未来バンクから借りました」とPRしている。だった
らみんな公開してしまおうと、今では融資先を全て公開している。APバンクもこれを踏襲してい
る。オープンにすると返済率が格段に上がる。
 結局誰かが選ばなければならない。その人はリスクを抱えるが、そうでないとまともなNGOと
まともでないNGOとの線引きはできない。

フリーペーパーについて
 明治学院大の辻信一さんがスローカフェやスロービジネスのムーブメントを起こそうとしてい
る。それに触発されてスロービジネスで食えるようにしたいと、学生が広告宣伝を媒介にして無
料に配るフリーペーパーを作っている。フリーペーパーが伸びてくると、広告宣伝の媒体として
使えるので、資金が投入されると、ただでまわしながら給料が出るという仕組みになる。これに
は結構センスが必要。

関西は地方だと思えるが。関西より関東では広告業にかかわっている人の絶対数が
多いのでは。周りが上手に人が繋がってアピールできるようになりにくいのがネックに思
える。
 人はアウトプットが全てだと思う。内心はどうであれ外に出したもので評価されるので、外に
出したものが重要なポイントになる。日本人には以心伝心の思いがあって、アウトプットをしな
いのが美徳のようになりがち。NPOやNGOはもっとアウトプットすべき。
アウトプットを前提にすると、情報の選び方はまったく違ってくる。私は本を読むときに、その人
の考えを覚える気は毛頭ない。マルクスやウェーバーを読もうが、その信者になることはまった
くなく、そこらへんの雑誌を読むのと変わらず、自分の考えを創るために選んでいる肥やしの
一つと考える。重要なのは自分の頭に何が考え付いて、何が創ることができたのか。それだけ
が重要なので内容は覚えない。
 辞書に書いてあることは辞書を引けばいい。自分の説をつくるためにどうしてもという時に覚
えればいい。自分の考えを創るために情報を得ていったらいい。
 その点で東京にいる人はいろんなつながりが少ないので、いかにアウトプットするかを考えな
いといけなくなる。ところが地方ではアウトプットしなくても以心伝心でわかるところがある。「彼
はあそこのダレベエの三男」というようにつながりがわかる。逆にアウトプットする努力が弱くな
る。だから、地方かどうかよりもアウトプットの度合いが違いを生んでいるのでは。

911の衝撃から平和活動に取り組んでいる方がたくさんいる。神戸では大震災から社
会的活動をする。その時代状況でかかわろうとするが、田中さんの動機は?
 自分の動機はいつだったのかはわからないが、簡単に言うと正義感や義理堅いところから。
とにかく、友人がひどい目に合わされていると義理堅いのですごく腹が立つ。中学生から不良
で、成績は241番中239番。とにかく勉強ができない上に協調性が全くなかった。高校は7つ入
ったが全部クビになった。大検で夜間大学に入ったがすぐに辞めたくなって、自動車の免許を
取って遊びほうけていた。
 うれしいことに左翼学生が試験をつぶしてくれたので、試験の代わりにレポートを出すことに
なり、授業には全然に行かなかったがとにかく書いた。学校をクビになるのは協調性がなかっ
たから。だから自分の考えでこれが正しいと思うと、それを譲る気がしなかった。学校には向か
なかったが、レポートを書くことになったので、自分で好き放題書きたいことを書いて送ったら、
全部成績Aで返ってきた。それ以降、大学に真面目に取り組むようになった。その時が、自分
が生まれて初めて評価された時。これまでまったく評価されなかったが、自分が好き勝手書い
たことが大学に評価されたので、それ以降、自分の考えていることをどう独自なものにするか
が中心になってきた。
 ずっと民間企業に働いていたが公務員になった。中卒で働くところは徒弟制度のようなとこ
ろ。社長に車を洗っとけと言われたりしたが、その車はカローラ(笑)。とにかく金儲けのために
働くのはいやだ、社長のために働くのはもううんざりと思い、働くんだったら一生懸命働いた分
がほかの人に回るようなものがいいと、公務員を選んだ。高校卒業する前に地方公務員にな
った。最初に回されたのが高校の事務だった。昼間は高校に勤めて「先生」と呼ばれるが、夜
になると夜間高校に通って「生徒」と呼ばれるようになる(笑)。とにかく自分なりに生きたいと思
って、大学を卒業するときにそれまで努めていた公務員は辞めて、1年間海外に行こうと思っ
たが、法律の勉強が好きになり、1年間法律の勉強だけしてみたい気になって、遮二無二勉強
した。その後別の地方公務員試験を受けて現在に至る。
 とにかく好きなように生きたい。好きなように生きるためにはどういう職場を選んだらいいか
考えた。仕事は大変だが、とにかく自分の思いを一生曲げずにすむところと思い、地方公務員
を選んだ。自分の意志が大事だと思っているので、カネを稼ぐ仕事に従属したくない。だから
仕事は真面目にするが、役所の掟に従属する気はまったくない。



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