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社説2 速やかに国籍法の手直しを(6/5)

 父親か母親か、片方でも日本国民であれば、生まれた子は自動的に日本国籍を得る――というのが国籍法の原則だが、例外がある。

 法律上結婚していない日本人男性と外国人女性の間に生まれ、認知が出生後になった子だと、両親が結婚しない限り国籍が付与されない。

 それを定めた国籍法3条が憲法に違反するかどうかが争われた裁判で、最高裁大法廷は3条の一部が違憲で無効とする判決を下した。

 結婚している両親から生まれた嫡出子と、そうでない非嫡出子との間に「合理的な理由のない差別をつける」部分が、法の下の平等を定めた憲法14条に違反するとの判断だ。無効部分を除いた3条を適用して原告に日本国籍を与えるとした法解釈と併せ、評価できる判決だ。

 日本の国籍法は、もともと父親が国民であるのを国籍の条件とする父系優先血統主義をとっていた。それを現行の父母両系血統主義に改めたのが1984年の改正である。3条も同じ改正のときに設けた。改正当時、血統主義をとる諸外国の多くが3条と同趣旨の規定を国籍法に入れており、改正によって広がる、国籍を与える範囲に少しでも枠をはめる効果を期待した条項と考えられる。

 四半世紀がたった現在、国内外とも事情は随分変わった。

 嫡出子と非嫡出子を法律上なるべく平等に扱うことに大多数の国民は賛成するだろうし、認知だけを条件として「父が日本人、母が外国人」の非嫡出子にも嫡出子と同様に国籍を与えるようにしても、抵抗を感じる国民は少ないだろう。

 外国でも、3条と同趣旨の規定をもっていた国々のほとんどが規定をなくした。

 大法廷判決は「3条の規定は改正当時には一定の合理性があった。しかしその後の我が国における家族生活や親子関係の意識の変化、実態の多様化の中で合理的な根拠を失った」旨、指摘している。

 国境を越えた人の行き来は増えるばかりだ。労働力として外国人女性を積極的に迎え入れる必要も高まっている。国籍法3条を適用される例は、これからも増加するだろう。国会は、違憲とされた部分を速やかに手直ししなければならない。

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