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社説1 少子化対策、さらなる努力が必要だ(6/5)

 2007年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むと推定される子どもの数)は前年から0.02ポイント上昇し、1.34になった。05年に過去最低の1.26を記録した後、出生率は2年連続で多少持ち直した形になるが、問題は出生数だ。

 統計上、出産期と位置づける15―49歳のうち特に出産が多い年代である20代後半から30代前半の女性の数が減っているため、出生数は前年より3000人少ない109万人弱にとどまった。少子化に歯止めがかかったとはいえない。

 第1次ベビーブームの1947―49年には毎年270万人が、彼らが親となった71―74年には200万人が生まれた。だが第2次ベビーブーム世代が親になるはずのこの10年、出生数は低迷している。

 その理由として近年注目されているのが、仕事と生活のバランスの問題だ。総務省の調査では、30代男性の4人に1人が週60時間以上働くなど、多くの職場で長時間労働が常態化している。女性が働き続けようと思えば仕事か出産か二者択一を迫られ、家庭に入った女性は夫の協力が得られず孤独な育児を強いられる。残業を避けるため非正社員になれば、子育ての費用が稼げない。

 政府は昨年末に「仕事と生活の調和憲章」を制定した。行動指針では10年後に年休を完全取得することや、男性の育児休業取得を現在の0.5%から10%にすることなどの数値目標を掲げ、努力を促している。だが、努力目標だけでは、実態はなかなか変わらない。実効性のある対策が必要だ。

 子育て支援サービスの不備も目立つ。都会では保育所の途中入所が難しく、共働きの女性は時期まで考えないと安心して子どもを産めない。放課後に小学校低学年の児童を受け入れる学童保育の施設も不足し、適正数を超えるすし詰め保育が問題になっている。政府は2月に「新待機児童ゼロ作戦」を打ち出したが、急増する需要に追いついていない。

 日本の少子化関連支出はかなり低い。経済協力開発機構(OECD)の03年の調査によると、児童・家族関係社会支出の国内総生産(GDP)に対する比率は、フランス3.02%、英国2.93%、ドイツ2.01%。日本は0.75%だ。

 政府が少子化対策に本格的に取り組むには、高齢者への給付に偏っている社会保障の財源の配分を工夫して、子育て支援などを手厚くすることも必要だろう。対策の項目はほぼ出そろった。どうやって実現するかという段階を迎えている。

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