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タイトル細胞接着分子
記事No222
投稿日: 2002/04/24(Wed) 13:16
細胞接着分子は、
1.インテグリンファミリー
   β1インテグリン VLA−1〜6
   β2インテグリン LFA-1、Mac-1、p150,95
   β3インテグリン gpUbVa
    その他β鎖の種類によりβ4〜9インテグリンに分類される。
2.メンエキグロブクンスーパーファミリー
   CD2,CD4,CD8,B7-1(CD80),B7-2(CD86),ICAM-1,ICAM-2,VCAM-1、N-CAM
3.セレクチンファミリー
   L-セレクチン、E−セレクチン、P−セレクチン
4.リンク蛋白質ファミリー
   CD44とそのアイソフォーム、TSG-6、RHAMMなど
5.カドヘリンファミリー
   N-カドヘリン、E-カドヘリン、P-カドヘリン、VE-カドヘリン
6.シアロムチンファミリー(シアル酸:セレクチンのリガンド)
   glyCAM−1,CD34,PSGLなど
などがある。

これらの分子の中には、自分と同じものを認識するホモフィリック結合や、自分と相補的な構造を認識するヘテロフィリック結合がある。
例えば血管内皮細胞どうしの結合はホモフィリックな結合、抗原提示細胞(APC)とT細胞の結合はヘテロフィリックな結合である。
血小板の凝集は特殊で、血小板上のβ3インテグリンの一種であるgpUbVaがフィブリノーゲンなどの血液凝固蛋白質に結合し、別の血小板上のgpUbVaがこの結合に加わる為に、接着分子は自分と異なるリガンドを認識するものの、細胞結合としてはホモフィリック結合になる。

タイトルインテグリン(integrin)
記事No237
投稿日: 2002/06/18(Tue) 11:43
インテグリンは、細胞外分子と細胞骨格系をつなぐ細胞膜貫通型のレセプターである。フィブロネクチンのレセプターとして最初に発見され、細胞外と細胞内を integrate する役割を果たす意味で名付けられた。
インテグリンの構造はα鎖とβ鎖が非共有結合で会合するヘテロダイマーであり、現時点でα鎖は16種類、β鎖は8種類同定されている。これらの組み合わせにより、22種類のインテグリンが報告されている。

コラーゲン、ラミニンなどの細胞外基質や、血小板、白血球の接着に関与する分子も類似した構造をしており、これらの類似した一群の糖タンパクは、インテグリンスーパーファミリーと呼ばれる。細胞外基質と細胞間、細胞と細胞間の接着過程で重要な役割を果たしている。

インテグリンにはリガンドとの結合能を有しない静止状態と、有する活性化状態が存在する。細胞内シグナルによるインテグリンの活性化 (inside-out signal)、リガンドとインテグリンの接着による接着斑 (focal contact)へのインテグリン分子の集積および細胞内へのシグナル経路の活性化 (outside-in signal)の2方向のシグナル伝達が存在する。

タイトルCD44
記事No235
投稿日: 2002/06/17(Mon) 16:51
接着分子CD44は、炎症巣への活性化T細胞の浸潤や癌細胞の転移に関与する多機能性細胞表面分子である。構造的には、細胞膜を1回貫通するT型糖蛋白質で、そのアミノ末端にはヒアルロン酸結合能をもつリンクモジュールとよばれる領域が存在し、生体の主要な細胞外基質(extracellular matrix:ECM)構成成分であるヒアルロン酸に結合することによって生体内で重要な役割を果たすことが示されている。

たとえば、初期造血はCD44に対するモノクローナル抗体によって阻害されるとともに、ヒアルロン酸を分解するヒアルロニダーゼによって阻害される。CD44陰性細胞株にCD44を遺伝子導入により強制発現させると内皮細胞株に結合するようになり、その結合はヒアルロニダーゼによって阻害される。

活性化T細胞はヒアルロン酸に結合能をもち、ヒアルロン酸上でCD44を介してローリング現象を示す。すなわち、CD44の重要な生物学的機能の一つは、ECMへの細胞結合を媒介するマトリックスレセプターとしての役割である。

一方、CD44は、ECMとは無関係なヒアルロン酸以外のリガンド、たとえばセルグリシン、オステオポンチン、MHCクラスUインバリアント鎖などとも結合することが示されている。特に、セルグリシンはキラーT細胞のCD3を介したグランザイム放出を促進することから、ヒアルロン酸以外のリガンドもCD44を介して細胞内にシグナルを入れることが出来ると考えられる。

CD44を介したシグナルが細胞膜から核へ伝達されるという現象は抗CD44モノクローナル抗体を用いた解析によって明らかにされた。CD44分子を特定のモノクローナル抗体によって架橋するとT細胞の活性化が誘導される。同様に、抗CD44抗体刺激によってNK細胞やキラーT細胞の細胞傷害能が上昇し、単球においてはTNFaやIL-1bの放出が促進される。しかし、さまざまな抗体がこのような能力をもち、実際にこのような細胞内へのシグナル伝達をひきおこすために必要なCD44上の構造的要求性あるいは責任エピトープはこれまでに明らかにされていない。

そこで、CD44を介したシグナル伝達機構を更に明らかにするために、リンパ球の細胞膜上にCD44の細胞外領域とFasの細胞内領域からなるキメラ分子を発現させることが試みられた。
Fasは細胞膜上の分子で、架橋されると細胞内に細胞死をひきおこすアポトーシス誘導分子である。このCD44/Fasキメラ分子では、細胞外部分のしかるべきエピトープが架橋されるとFasの細胞内領域が会合して細胞にアポトーシスが起こる。すなわち、この場合、Fasは細胞内にCD44を介してシグナルが入ったことを示すインジケーター分子として用いられた。そして、このCD44/Fasキメラ分子を発現させた細胞株を様々なエピトープを選択的に認識する抗CD44モノクローナル抗体で刺激し、アポトーシス誘導の有無を観察することによって、CD44の細胞外領域上の機能的エピトープの探索を行なった。
その結果、興味深いことに、ヒアルロン酸結合ドメインのみならず、ヒアルロン酸結合に無関係と思われていたエピトープもリガンド結合に重要な役割を果たすことが明らかになった。このエピトープがヒアルロン酸以外のリガンドの認識に役割を果たすのかは不明であるが、さまざまな腫瘍がヒアルロン酸以外のリガンドを認識して増殖、転移する報告があることから、このエピトープの機能的役割を明らかにすることは緊急の課題である。

タイトルリンパ球ホーミングの分子機構とCD44
記事No236
投稿日: 2002/06/17(Mon) 16:52
a.白血球接着分子L-セレクチンの新規リガンドの探索

 リンパ球ホーミングレセプターと呼ばれる糖鎖認識接着分子L-セレクチンについて、ラットにおいて初めてその cDNA クローニングを行なわれた結果、L-セレクチンが、シアリルルイスなどの糖鎖構造、スルファチドのような特異的な硫酸化糖脂質などを認識するとともに、白血球の血管外移動における必須のプロセスである血管内皮細胞上での白血球ローリングを司る分子であることが明らかになった。さらに、L-セレクチンの機能抑制が強い抗炎症効果をもつことが実験的に明らかになり、L-セレクチンが抗炎症のためのよい標的分子であることが提唱されてきている。

興味深いことにL-セレクチンのリガンドは、リンパ球ホーミングを媒介するリンパ節の特殊な血管(high endothelial venule; HEV)のみならず、脳白質や腎の遠位尿細管にも発現している。また、ラット腎臓から複数のプロテオグリカンタイプの新規L-セレクチンリガンドが存在することが確認され、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンおよびヘパラン硫酸プロテオグリカンの両者からなることが報告されている。

そのなかでも腎癌細胞株から精製、同定したversicanは、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの一種で、シアリルルイスX様糖鎖構造を持たない新規L-セレクチンリガンドである。L-セレクチンはそのレクチンドメインを用いてversicanのコンドロイチン硫酸側鎖に結合し、この作用により細胞接着を媒介する。現在、L-セレクチン・versican相互作用の生理的、病理的意義について検討中である。

 

b.白血球接着分子CD44の機能の解明と新規リガンドの探索

 L-セレクチンと同様に、リンパ球ホーミングに重要な役割を果たすとされる CD44 分子については、そのリガンドがヒアルロン酸のみならず、セルグリシン(serglycin)と呼ばれる造血系特異的プロテオグリカンであることが明らかになった。

さらにセルグリシン上のCD44認識エピトープがコンドロイチン硫酸側鎖であり、特にクラスタリングをおこしている糖鎖構造がエピトープ形成に重要であることを報告された。その後、セルグリシンは細胞内に分泌顆粒をもつ造血系細胞に広くかつ特異的に発現し、コンドロイチン4硫酸のみならず、コンドロイチン4、6硫酸、コンドロイチン6硫酸側鎖をもつセルグリシンも CD44 結合能をもつことが明らかになった。

CD44分子はリンパ球の活性化やエフェクター機能発揮のために重要な役割を果すことが示唆されてきたが、これまで、ヒアルロン酸のような広い組織分布をもつ分子が果たして CD44 分子の特異的リガンドとして機能するのかは疑問であった。しかし、セルグリシンのような組織特異的に発現するリガンドの存在が明らかになり、今後CD44分子の機能に関する研究が飛躍的に進むことが期待される。

また、セルグリシンの他にもさらに複数の CD44 に対する新規リガンドが発見され、その一つが上記のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンveresicanであることが確認されている。

また、CD44のヒアルロン酸結合部分以外の細胞外領域に細胞内へのシグナル伝達に関与する部位があることを最近発見されている。

タイトル接着分子のユニークな特徴
記事No223
投稿日: 2002/04/24(Wed) 13:18
接着分子は通常、複数のリガンドと結合するという特徴がある。複数の相手を認識できるのは、おもの2つの場合がある。
一つ目は、ある接着ドメインが認識する構造が、複数の接着分子上に存在する場合である。
その典型的な例は、β3インテグリンのgpUbVaで、RGD配列を認識する為に、この配列をもつフィブロネクチン、フィブリノーゲン、von Willbrand因子(vWF)などの複数の相手を認識できる。また、L-セレクチンはglyCAM-1,CD34などの複数の糖タンパク質に結合できるが、両者で共通に存在するムチン型糖鎖を認識する為である。

もう一つは、1つの接着分子の上に複数の接着ドメインが存在する場合である。その良い例は免疫グロブリンスーパーファミリーに属するICAM-1で、LFA-1とMac-1という異なるβ2インテグリンに結合するが、LFA-1と結合する時は、domain1をMac-1と結合する時はdomain3を用いる。

タイトルRGD配列
記事No224
投稿日: 2002/04/24(Wed) 13:18
細胞外マトリックス(フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲン)や血液凝固因子(フィブリノーゲン、スロンボスポンジン)はその分子内に3つのアミノ酸からなる細胞との接着に働く配列、 RGD(アルギニン、グリシン、アスパラギン)配列を有する。したがってこれらの分子も接着分子と言える。
じつは RGD配列はウイルスも利用している。adenovirusの他にピコルナウイルスの手足口病ウイルス、コクサッキーウイルス A9、 B型肝炎ウイルス、及 C型肝炎ウイルスがRGD配列を持っている。ただしadenovirus以外のウイルスのもつRGD配列が感染のために使われているか否かまだ分かっていない。

タイトル接着分子の細胞内情報伝達系
記事No225
投稿日: 2002/04/24(Wed) 13:19
接着分子を介したシグナル伝達系は、インテグリンを用いた解析が進んでいる。
インテグリンを介して細胞を刺激すると、細胞内でパキシリン、テンシン、FAK(focal adhesion kinase)やMAPKなどのリン酸化が起こる。
FAKがリン酸化を受けると、SH2 ドメインをもつSrcファミリーのメンバーやPI-3キナーゼに結合するようになる。
また、活性化FAKはGrb2/SOS(アダプター蛋白 RASアクチベーター)と複合体を作ってGTP-Rasへの変換を促進し、Raf,MAPKキナーゼやMAPKなどのセリンスレオニンキナーゼカスケードを動かす。

しかし、このようなシグナル伝達様式は、特にFAKの下流においては増殖因子のそれと大きく変わらず、細胞接着に特異的なシグナルがどのように伝達されるかはわかっていない。

タイトルSH2 ドメイン
記事No499
投稿日: 2004/06/26(Sat) 11:51
チロシンキナーゼ Src に見出された約100個のアミノ酸からなるタンパク上の構造であり、さまざまなシグナル伝達分子上に存在する。

SH2 ドメインは特定の配列中に存在するリン酸化チロシン残基と高い親和性で結合する。