「休耕田に咲く花は美しいか?」。農家の人によくこんな問い掛けをする。コメの生産調整(減反)に伴い、農地として使わなくなった休耕田に植えられた花のことだ。美観対策として、ヒマワリやコスモスなどが育てられている。
「街から見に来る人も喜んでくれる。でも、作りたくて作ってる訳じゃない」。大筋でこういう答えが返ってくる。「雑草よりはまし」という複雑な心境の人が多い。農政のゆがみの象徴かもしれない。
コメ余りを背景に減反は強化され、今では稲作ができない水田は約40%に上る。代わりに大豆などの転作作物を国は奨励しているものの、休耕田が目立つ。生産者の高齢化や兼業農家の増加などで転作は思うように進まず、大豆の国内自給率は5%しかない。
世界的な食料危機を受け、町村信孝官房長官が減反政策に一石を投じた。「食料不足の国があるのに、日本が減反をしているのはもったいない」とコメの増産を訴えた。
これに対し、自民党内から反論が噴き出した。コメの増産で米価が下がれば、農家の反発が予想されるからだ。確かに減反の見直しは単純に進む話ではない。ただ、現状維持でいいとは思えない。
大豆などへの転作推進策も含め、幅広い観点から論議する必要がある。休耕田の花は美しいだろうか。