二〇〇七年度版「エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書)は、原油価格の急激な上昇の要因を分析し、沈静化へ国際社会が協調して努力する必要を強く訴えている。
原油価格は一九九九年を底に上昇に転じ、二〇〇四年から急騰、〇七年七月以降は史上最高値更新が続いている。白書は、高騰の要因として、まず新興国を中心とした需要増を挙げる。九一年と〇六年の石油需要を比べると中国やインド、ブラジルの増加が著しい。
イラクの政情不安定やイランの核開発問題といった「地政学リスク」も指摘した。ロシアやベネズエラなどを例に、石油資源の国家管理強化を図る資源ナショナリズムの台頭なども要因に挙げている。
しかし、白書はこれらの要因は近年特に深刻化したわけではなく、原油需給のバランスは悪化していないとし、投機資金の流入を問題視している。
〇四年ごろから米国の年金基金などが原油市場へ大量に流れ込むようになり、金融市場との連動性が強まった。特に昨年、米国のサブプライム住宅ローン問題が顕在化した後、金融市場から逃避した資金や金融緩和による資金が流入し、株式や債券市場に比べれば小さい原油市場は重大な影響を受けたとする。
白書は、〇七年後半の平均原油価格でいえば一バレル=九〇ドルのうち、需給要因で説明できるのは五〇―六〇ドルと分析する。残りは投機資金とみる。
原油価格が投機資金の影響で実需と乖離(かいり)していることを、白書ははっきり打ち出した。原油高騰は消費国を中心に食料品を含む物価上昇や雇用の悪化を招き、国内総生産を下押しする。産油国でもインフレが進むなど悪影響を指摘した。
その上で、投機資金対策として白書は市場参加者の動向を確実に把握することや、国際エネルギー機関(IEA)が原油の需給状況などを市場へ的確にアナウンスすることを挙げる。地政学リスク軽減も訴え、また省エネ推進や石油備蓄などについて主要消費国が協力する必要性も強調している。
速効性を期待するのは難しいが、白書が挙げるこれらの対策を各国が協力し、進めることが肝要だろう。価格沈静化への強いメッセージを市場に伝えなければならない。
七日から二日間、青森市で主要国(G8)各国と中国、インド、韓国のエネルギー相会合が開かれ、七月には主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)と続く。日本は、協調をリードする立場にある。
だれもが驚きで受け止めたことだろう。二〇一一年度にも岡山県が自治体財政健全化法に基づく財政再生団体に転落しかねないとし、石井正弘知事が「財政危機宣言」を発表した。
三日には部局横断の「財政構造改革プロジェクトチーム」を発足させ、歳出削減策の検討に入った。九月県議会までに対策の基本方針をまとめ来年度予算に反映させるとするが、一段の行財政改革にはよほどの県民の理解が求められるのは当然だ。
県の場合、決算段階の収支不足が約二百十億円(実質赤字比率5・0%)で財政再生団体に転落する。県が公表した〇九―一八年度の中長期財政試算では、行革努力に応じて発行できる県債を充てても毎年百三十七億―二百七十億円の収支不足が生じる。特定目的基金からの流用という本来は好ましくない「禁じ手」も限界に近づき、来年度利用可能な基金は約九億円にすぎないという。
知事は就任以来の十年以上、財政難の中で行革を最優先課題に掲げてきた。徹底した行革を進めたとしていたにもかかわらず財政破たんが懸念される状況に追い込まれたのはなぜか。まずは十分な説明を聞きたい。
情報開示の遅さが問題だ。基金が底をつくことは、少なくとも本年度予算の編成段階では分かっていたはずである。状況が厳しければ厳しいほど、早く県民に現状を示して手を打つべきではなかったか。
知事は第三セクターなども含めて財政の全容を示し、議会とともに持続可能な財政構造の確立へ向けて根底から見直していく必要がある。税収増を目指す動きも加速しなければならない。万が一にも財政再生団体になれば、県民への影響は甚大になる。その責任の重さを肝に銘じてもらいたい。
(2008年6月4日掲載)