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2008年6月5日

◎LED集魚灯 地元イカ釣り船の助け舟に

 中型イカ釣り漁船に装備する青色発光ダイオード(LED)集魚灯の設置方法を検証す る石川県水産総合センターの実験は、燃費を抑えながら漁獲効率アップの効果を探る全国初の試みであり、燃料価格の高騰に苦しむ地元イカ釣り漁船への力強い助け舟にしてほしい。

 県水産総合センターでは、三年前からLED灯の燃料効率などの実験を重ねてきた。従 来の集魚灯に比べ、大幅に燃料消費量が軽減されることが分かったが、一方で、漁獲量が必ずしも従来より上がらないことも判明した。それだけに、今回、LED灯の設置場所を船上から海中にすることで、専門家は漁獲効率が格段に上がると指摘しており、関係者の期待は高い。

 もちろん、効果が実証できたとしても、LED灯が高額な上に、乱獲防止などの観点か ら、海中への設置が許可されるまでのハードルは、かなり高いとみられる。今回の実験の成果をもとに水産庁の理解を得たい。

 県内では近年、イカの価格の低迷に苦しんでおり、昨年、県漁協が能登の六支所が使用 する重油を一括購入して輸送のコストを削減するなど、経費節減策に工夫している。

 しかしながら、折からの燃料の高騰が追い打ちをかけ、採算が合わない状況が続いてい るため、今季から能登町小木港を拠点とするイカ釣り漁船三隻が、操業を停止する事態になっている。

 県内でのイカの水揚げ量は、農水省の昨年の統計によると、年間一万七千トン近くあり 、青森や北海道などに次いで全国六位、地元での消費量についても、全国主要都市の家計調査によると、昨年、金沢市が、一世帯当たり一カ月に約五キロを消費し、全国四位と上位に入っている。

 このように、イカは能登を中心に、いしりなどの加工品も含めて県内の漁業や食品産業 を支え、生活に密着した食材としても県民に親しまれている。それだけに、県も、県漁協とともに、全国の自治体や関係団体と連携し、一体感を持って国に水中式LED灯の設置基準の緩和を呼びかける取り組みが求められる。

◎オバマ指名確定 対日関係を聞きたい

 米大統領選の民主党指名争いで、バラク・オバマ上院議員の指名が確定した。焦点は十 一月の本選に向けて、共和党の指名を決めているジョン・マケイン上院議員との戦いに移るが、オバマ氏はこれまで対日関係、対日政策についてほとんど何も語っていない。日米同盟を重視しているというマケイン氏とは対照的に、オバマ氏は日本について、あまりよく知らないという見方すらある。指名が確実になった今こそ、オバマ氏は自らアジア外交、日米関係について語ってほしい。

 オバマ氏は五カ月にわたった指名選挙で、「変革」を掲げ、若年層や黒人層の支持を得 た。共和、民主両党を通じて、黒人の指名候補は初めてであり、予備選開始前に本命視されたヒラリー・クリントン上院議員をかわしての指名獲得は劇的だった。かつてジョン・F・ケネディ大統領が米国民を魅了するカリスマ性を備えていたように、オバマ氏にもそんな天性のカリスマ性を感じる。

 ただ、オバマ氏は政治家として経験が浅く、過去の実績や言動から政策を推測するのが 難しい。共和党のマケイン氏の場合、アーミテージ元国務副長官やグリーン前国家安全保障会議アジア上級部長ら知日派のブレーンが付いており、日米関係はそれほど大きくは変わらないという予想が成り立つが、オバマ氏の場合はどうなのか大いに気にかかる。

 これまでのオバマ、ヒラリー両氏の公開討論会で、対日政策が取り上げられたことは一 度もなかった。日米関係を論じても票にならないからだろうが、それでもヒラリー氏は、「米中関係は今世紀最も重要な二国間関係」と述べた論文が日本軽視との批判を受けるや、即座に「日本は米国にとって価値と利益を深く共有する、確固たる不動の長期的パートナー」との声明を発表し、日本側の懸念を打ち消した。

 大統領選に挑むオバマ氏は、米国の重要な同盟国である日本との関係について具体的に 語る必要がある。民主党支持者だけに訴えていればよかった時期は、もう終わったのだ。


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