6月4日の中医協

 厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)は6月4日、総会(第129回)と診療報酬基本問題小委員会(第122回)を開催した。舛添要一厚労相が5月30日の厚労省の会議で「(中医協は)透明性がない」と発言したことに対して、遠藤会長は総会の冒頭で不満を表した。後期高齢者医療制度の廃止に関する質問に対しては、「総会の議題にはなじまない」と一蹴(いっしゅう)する場面もあった。(新井裕充)

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 総会の議題は、▽医薬品の薬価収載▽DPCにおける高額な新規の医薬品などへの対応▽在宅自己注射▽2008年度診療報酬改定結果の検証▽その他―の5点。

 冒頭、遠藤会長が舛添厚労相の発言について、「不透明と言われるゆえんは毛頭ない。大変困惑している」と不満を表した。遠藤会長は、中医協の事務局を務める厚労省に対し、「舛添厚労相の真意を確認し、誤解に基づくのであれば事実を的確に伝えてほしい」と求めた後、議事に入った。

 最初の議題の「医薬品の薬価収載」では、13日に収載予定の新医薬品(内用薬8、注射薬5)について、中医協・薬価算定組織の加藤治文委員長が報告した後、厚労省がこれらの新医薬品の収載などを提案した。通常、「医薬品の薬価収載」は委員から意見が出されずに了承されることが多いが、「中医協は不透明」との指摘を意識したのか、委員からの質問が相次いだ。
 問題となったのは、ノーベルファーマの「ルナベル配合錠」で、「子宮内膜症に伴う月経困難症」に効能・効果があるとする内用薬。この薬について、厚労省は処方日数の「14日制限」を解除。「薬価収載後1年間、投薬期間を14日に制限するのではなく、30日に制限する」との注意書きを付けた。「臨床試験で有効性や安全性が確認されている」との厚労省の説明に対し、大島伸一専門委員(国立長寿医療センター総長)が「きちんと科学的根拠を示す必要がある」と指摘。厚労省は「今回は例外的なケース」と説明した。
 また、塩野義製薬と大日本住友製薬の血圧降下剤「イルベサルタン」と、中外製薬の注射薬「トシリズマブ」について、支払側の対馬忠明委員(健保連専務理事)が「今回、市場規模の予測が約500億円の薬が2つある。新規性が高いなら理解できるが、そうではない。これは販売戦略か、よくあることか」と質問。厚労省の薬剤管理官は「全体の市場が約4000億円で、製薬企業の見込みはその1割。必ずしも変ではない」と回答した。審議の結果、今回提案された13種類の新医薬品はすべて承認された。

 「DPCにおける高額な新規の医薬品などへの対応」では、13日に収載予定の新医薬品のうち、入院費の包括払い方式(DPC)に関係する3種類の医薬品について、包括評価の対象外とすることを承認した。
 このため、次の診療報酬改定まで出来高算定(包括評価の対象外)となる医薬品に、ファイザーの「スーテントカプセル」、バイエル薬品の「ゼヴァリン イットリウム」と「ゼヴァリン インジウム」の3品目が加わった。

 「在宅自己注射」では、関節リウマチに対する治療に使用する「アダリムマブ」について議論が紛糾したが、最終的には承認された。
 「在宅自己注射」とは、長期にわたって頻繁に注射する必要がある患者の利便性を考慮して、自宅でも注射できる薬剤の保険適用を限定的に認めることで、現在18種類ある。
 今回、厚労省は「フォリスチム」と「アダリムマブ」の2種類の薬剤の保険適用を提案。このうち、「アダリムマブ」の用法を「2週間に1回、皮下注射する」とした。
 これに対して、診療側の西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)が異を唱えた。「これを認めてしまうと無限に広がる。基準を明確にしないと、なし崩し的に例外が増える」と指摘、自己注射した後に病状が急変した場合への対応などを懸念した。西澤委員は「2週間に1回なら、医師の訪問診療や訪問看護の際に注射すべき」と慎重な対応を求めた。
 遠藤会長は再審議を提案したが、山本信夫委員(日本薬剤師会副会長)が「次回の審議にすると、また延びてしまう。現在通院している患者のことを考えるべき」と主張。厚労省は「在宅自己注射には、外来通院の困難性という視点もある」と強調した。議論の末、今回提案された2種類の薬剤の保険適用が承認された。

 「2008年度診療報酬改定結果の検証」では、5月21日の検証部会で決定した調査項目について、同部会の庄司洋子部会長(立教大大学院教授)が報告した後、保険局の担当者が「検証の視点」「調査対象」などを説明した。
 今年度の調査項目は、▽勤務医の負担軽減▽外来管理加算▽後発医薬品の使用状況▽後期高齢者医療制度(後期高齢者診療料)▽同(後期高齢者終末期相談支援料)―で、来年度の調査項目は▽明細書▽医療機能の分化と連携▽回復期リハビリの「質の評価」▽歯科外来診療環境体制加算▽ニコチン依存管理料。
 質疑では、藤原淳委員(日本医師会常任理事)が「外来管理加算」にかみついた。今回の改定で5分程度の説明が算定要件に加わった同加算について、「かつて経験したことがないほど、現場から不満が噴出している。『5分間要件』の呪縛(じゅばく)から解き放してほしい」と強い口調で不満を表したが、遠藤会長は「中医協小委員会での議論だ」と一蹴した。
 このほか、対馬委員から「来年度に調査する項目が次回の改定に生かせるかどうか心配だ」との意見も出された。
 審議の結果、「調査の項目」「検証の視点」「調査年度」など、改定の影響を調査する事項の大枠は了承された。具体的な調査内容は、検証部会で引き続き審議する。

 最後の議題の「その他」は、撤廃を求める動きが活発化している「後期高齢者医療制度」。保険局の原徳壽・医療課長が「与党のプロジェクトチームから一定の方向性が出ると聞いている。(厚生労働)大臣も考えを出すようなので、中医協での議論が必要なものがあるかもしれない。その際にはよろしくお願いしたい」と述べた。
 これに対して、大島委員が「後期高齢者医療制度が廃止になったら、どのような影響が出るのか」と質問したが、中川俊男委員(日医常任理事)が「政治的な議論は総会になじまない」と遮った。遠藤会長も「この場の議題として取り上げるべきではない」と同調した。大島委員は「手続き上の問題だけではどうか。廃案になったら、現在進んでいる手続きはストップするのか」と粘ったが、対馬委員も「大島委員の気持ちは分かるが、やはり問題ある」と反対したため、大島委員は質問を取り下げた。竹嶋康弘委員(日医副会長)は「中医協には限界がある」と強調した。

■ 診療報酬基本問題小委員会(小委、遠藤久夫委員長)
 総会に続いて開かれた小委では、「基本診療料(初診料・再診料)」について審議した。原課長は冒頭、「次回の診療報酬改定に向けて議論する場合、『基本診療料』『DPC』『薬価』が重要な事項となる。本日は『基本診療料』のうち、初・再診料について議論していただきたい」と述べ、「初診料、再診料の考え方」と題する資料を提示した。

 この日、厚労省が示した資料は、「初・再診料の点数」「初・再診料に含まれると考えられる項目」「初・再診料の点数の変遷」など。

 質疑では、対馬委員が資料について強く批判。「資料には『考え方』と書いてあるが、単純に点数などが書いてあるだけではないか。これで『考え方』と言えるのか」と追及した。西澤委員もこの意見に賛同し、「初・再診料の考え方は、『診療報酬とは何か』という問題に行き着く。基本診療料は『医師の技術料』といわれるが、そうでないものも含まれている。議論の材料(資料)をもっと整理する必要がある」と注文を付けた。
 藤原委員は再び「外来管理加算」に触れながら、「基本診療料も明確になっていない。これまでの政策を進めてきた厚労省の基本的な考えをプレゼンテーションすべきだ」と求めた。
 遠藤委員長は「幅の広い議論だ。多様な意見が出たので、要望にかなう資料をあらためて提出してほしい」と厚労省に求め、この日の小委は終了した。


更新:2008/06/04 20:48     キャリアブレイン

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