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【社説】牛肉問題、米国の賢明な判断に期待

 農林水産食品部の鄭雲天(チョン・ウンチョン)長官が3日、「韓国の国民が非常に心配している生後30カ月以上の牛肉の輸出を中断するよう、米国に要請した」と明らかにした。鄭長官は「回答が来るまで輸入衛生条件の告示は保留し、検疫も中断する」とも語った。韓国政府は「再交渉」という言葉は使わなかったが、事実上それに近い措置を米国側に要求したことになる。

 すでに両国が署名まで行った協定を再び修正しようというのだから、米国としては快く応じる理由も筋合いもない。気に掛かるのは、米国では署名が済んだ協定を書き換えた前例がないということだ。国際獣疫事務局は、特定危険部位さえ取り除けば、生後30カ月以上の牛肉も安全だと判定している。人口3億人の米国では、一般の国民が普段から何の問題もなく生後30カ月以上の牛肉を食べており、また生後120カ月以上の牛でさえも狂牛病(牛海綿状脳症、BSE)を発病したケースはない。それにもかかわらず韓国の要請に応じれば、米国としては生後30カ月が過ぎた牛肉に問題があることを認めるという結果になりかねない。このような点にも米国側が慎重になる理由があるのだろう。

 その上現在、日本や台湾などと行っている牛肉交渉でも、米国は韓国と同じように完全開放を要求している。これらの国々との綱引きが続く中で韓国に対してのみ譲歩すれば、日本や台湾に対しても当然譲歩せざるを得なくなる。すなわち「国際的な牛肉の取引は国際的な基準に従って行う」という米国が打ち立てた原則が崩れ去るという結果を、自らが招いてしまうことになるのだ。

 アレクサンダー・バーシュボウ駐韓米国大使は、「牛肉交渉は科学的な根拠の下で行われている。再交渉の必要性はまったく感じられない」「(韓国政府からの再交渉の要請には)失望した」などと語っている。

 しかしこの問題において米国は、もう一度落ち着いてよく考える必要がある。米国が生後30カ月以上の牛肉の輸出を押し通して得られる実利は特にない。2003年に韓国が輸入した米国産牛肉のうち、生後30カ月以上のものが占める割合は5%にも満たなかった。金額に換算すれば、全体の8億ドル(約844億円)のうちわずか4000万ドル(約42億円)以下だったのだ。今後韓国で生後30カ月以上の牛肉が消費される割合は、これよりもさらに低くなるか、あるいはまったく消費されなくなる可能性さえある。だとすれば、生後30カ月以上の輸出をあきらめることにより、米国産牛肉に対する韓国人の不安を根本から払拭させた方が、米国産牛肉の消費を増やすのにかえって効果的なはずだ。

 突き詰めて考えれば、米国も生後30カ月以上の牛肉を、必ずしも輸出に回さなければならない理由があるわけでもない。生後30カ月以上の牛肉は、そのほとんどがハンバーガー用のパテなどミンチとして使用されており、米国国内の需要にも追いつかない状況だ。そのため昨年はオーストラリアやニュージーランドから138万トンも輸入した。すなわち生後30カ月以上の牛肉の輸出にこだわる理由は何もないということだ。

 毎晩ソウルの都心で繰り広げられているキャンドル集会は、いつどの時点で突然反米デモへと様変わりするか、誰にも分からない。また、韓国にはそれを待ち望む勢力も存在している。韓国と米国はそのような事態が起こらないよう、お互いが協力して賢明に対処する必要がある。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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