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ブログ:アルファブロガーに聞く ~ 第7回 ぐっちーさん

ぐっちー 証券マンブロガー 東京都出身 モルガン・スタンレーなどを経て、現在は証券会社でM&Aや企業再生などを手がける。
ぐっちー 証券マンブロガー 東京都出身 モルガン・スタンレーなどを経て、現在は証券会社でM&Aや企業再生などを手がける。

 ◇動機は「ある種の正義感」

 アルファブロガーの人たちにブログについての考えや思いを語ってもらう連載企画の7回目は、前回の葉玉匡美さんと並び、昨年の「アルファブロガー・アワード2007」でアルファブロガーの仲間入りをした証券マンのぐっちーさん(48)。米証券会社「モルガン・スタンレー」で15年間勤務するなど米ウォールストリートで培った経験を元に、ブログ「債券・株・為替 中年金融マン ぐっちーさんの金持ちまっしぐら」で日々のマーケットや社会の動きを鋭く分析。金融関係者以外の幅広い読者からも支持されている。米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題が「世界同時株安」に発展し、多忙となる中でもブログの更新を続けているぐっちーさんに、都内のオフィスでデジタルメディア局の磯野彰彦局次長が話を聞いた。【米岡紘子】

磯野:大学を出た後、すぐにモルガン・スタンレーに入社されたのですか。

ぐっちー:83年に大学を卒業し、商社を経て86年からモルガンスタンレーです。00年まで勤務し、ニューヨークにも延べ4年間ほどいました。最初は債券のセールスなどをやっていましたが、その後投資銀行業務に回り、退職後は米国の投資銀行で04年まで働きました。一度独立し、現在は日本の証券会社に務めています。

磯野:現在の職場ではどんな仕事を。

磯野彰彦・デジタルメディア局次長
磯野彰彦・デジタルメディア局次長

ぐっちー:投資銀行業務、つまりM&A、企業再生、ベンチャーキャピタル--の三つです。M&Aは御存知の通り企業買収、買う方、買われる方の防衛、あるいは買う方の資金調達、買われる方のバランスシート、株主対策等々が具体的な業務ですね。企業再生というのは民事再生に至った企業や、民事再生までは至っていないけれど立ち行かなくなりつつある企業を再生すること。そして、ベンチャーの未上場会社を上場までもっていく仕事です。

磯野:ブログを拝見すると、最近全国を飛び回っているようですが。

ぐっちー:今お話した範ちゅうの仕事ばかりです。地方に再生案件があったりだとか、地方にM&Aの案件あったりだとか。

磯野:05年2月にブログを始めたきっかけは。

ぐっちーさん(手前)と磯野局次長
ぐっちーさん(手前)と磯野局次長

ぐっちー:やはりライブドアの堀江(=ライブドア元社長、堀江貴文被告)君の事件がきっかけです。ちょうどニッポン放送の買収をやっていた時、メディアは“時代の寵児”という取り上げ方をしていたので、ふざけるなと。私は堀江君と一緒に仕事をしたこともありますけど、ただインサイダーをやっているだけじゃないか、と。村上世彰さん(=村上ファンド前代表、村上世彰被告)もそうですが。それで当時、メディアの方に「そういう記事を書かないのか」と言ったら「それは書けない」という話でしたので、これはもう自分で書くしかないだろうと。ちょうどブログというツールが出回っていたので「書いてみようか」と始めました。最初はたいしたアクセスもなかったんですが、堀江君のやり口はこうだということをはっきり書きましたし、いかにいい加減な株式分割かということを書いたのも僕ぐらいでしたから、そのあたりから読者数が飛躍的に増えました。財務省や金融庁、日銀からも読者が増えていって。まさに口コミですね。

磯野:アクセスはどれくらいですか。

ぐっちー:今はだいたい1日2万~2万5000人、多いときは3万人ぐらいですね。休日はさすがに減りますが、8000~9000人は読みに来ている感じです。

磯野:財務省や日銀、金融庁関係以外に、一般の人も読んでいるんですか。

ぐっちー:どうもかなり読者層は広いみたいですね。一般の主婦とかデイトレーダーとか。本当は、いちいちCDO(債務担保証券)は何かとか解説しなくてもいいように、もっとプロ向けにハードルを高くしたいという気持ちもあるんですが、せっかくこれだけいろんな人が読んでくださっていますし。今でもかなり難しいところを書いているわけですが、それは例えば、私が一昨年の10月から警告していたサブプライム問題。テレビも新聞もよく分かっていない人たちが書き、しゃべっているので、本当のことを誰も言っていないわけです。まあ、プロの人はそれが仕事ですから、自分で勉強しろということなんですが、素人の人は、ある種だまされちゃっているわけです。ある人が米国社債ファンドと書いてある投資信託を買いました。てっきり社債が入っていると思ったら、サブプライムがぼこぼこ入っていると。実はこれは間違いではなく、売った証券会社もインチキはしてないんですが、ただ、社債の中にサブプライムが入っていることをきちんと説明してないんですよね。ですので、そういうリスクのあるところを皆さんに分かってもらえるよう、かなり難しいことも書いています。ですから、それをできるだけ分かりやすく、というのが今のところ私のミッションになってますね。

磯野:そうすると正義感のようなものが動機。

ぐっちー:まあ、ある種正義感でしょうね。今、自己責任とか言うじゃないですか。それは情報を100%みんなが共有できて初めて自由競争なのであって、それがないのに自由競争だと言われたら、情報から遠い人は負けちゃうに決まっています。むしろ強い馬に重いおもりを載せて走らせるべきなのに、今は弱い馬に「情報が足りない」という非常にヘビーなおもりを載せて走らせているような状態なわけです。「それはおかしいだろう」ということは言いたいですね。

磯野:ブログを読ませて頂くと、いつも憤ってらっしゃる感じがしますが。

ぐっちー:あんまり私も憤りたくはないんですけどね。ただ、私もこれを書き始めて3年以上経って、いろんなエコノミストの方、大学の先生、政治家の方と知り合いになれました。そのうちの発信力のある人たちが、テレビや新聞で話したり書いたりするわけですが、はっきり言って癒着しちゃってるんですよ。例えば大学の先生は非常に中立な立場で言っているかと思いきや、やっぱり何かあった時に大臣候補にしてほしいとかいう気持ちがあって、自民党寄りのことしか言わないとか。記者の方もいい取材源がほしいので、あまり取材源の人が憤ることは書かない、というのもありますね。ですから私は意図的にオーバーアクションのところがあって。このぐらい怒っちゃわないと、どうも怒る場面がないんですよね。私は独立したこともありますし、何のしがらみもないんで。役所から怒られようが何しようがあんまり関係ない、というのが持ち味ですね。

磯野:ブログを始めたことでさらに人脈広がったということですが、テレビ東京に出演されたり、週刊誌「AERA」に書かれたりもしていますね。

ぐっちー:テレ東は2年ぐらい前から出るようになったんでしょうかね。小説家の幸田真音さんの紹介なんですよ。出たら結構評判が良かったらしくて、今、月1回のペースで出てますね。AERAは今年の新年号からです。編集長がずっと僕のブログ読んでいて、それで声をかけて頂きました。

磯野:アルファブロガーに選ばれたことで何か変わりましたか。

ぐっちー:読者層が広がったというのはすごく感じますね。コメントとかメールを拝見していると、今まで来なかったような人たちが来ているのはものすごく感じます。良しあしは別ですよ。今までの方は、主婦であっても相当株の勉強をされていましたが、今は本当にまっさらな素人で。人生相談のようなメールまで来るようになって、これは困ったなと。返事のしようがないですよね(笑い)。

磯野:投資相談のようなものも。

ぐっちー:来ます、来ます。「お金を払うから投資相談に乗って下さい」と。すいませんが、私まだ証券外務員の資格でやっているのでできません、とかですね。

磯野:1000万円預けるからとか。

ぐっちー:そうなんですよ、そういうの来るんですよ。勘弁して欲しいなと思いますけど(笑い)。

磯野:これからブログをどうしたいですか。

ぐっちー:ブログはできるだけ書いていこうとは思っています。2~3万の読者ってそうそう簡単に得られるものではないので。ブログは「このぐらい言ったらどういう反応があるのかな」という時に、非常に有効なツールですよね。「世の中からどれくらいはずれているのか」ということを試したい時に、思っていることをバーンと書くと、非常にビビッドに答が返ってくるんですね。AERAも確かにクレームとか来ますが、そこまでビビッドではないです。世の中がどこにいるのかを確かめるうえでは非常に貴重なツールなので、やめたくないですね。

磯野:他の人のブログは読んだりしますか。

ぐっちー:読みます読みます。私のブログにリンクを貼っている人たちも何人かいますが、あの人たちは金融の専門家じゃない人の方が多いんじゃないんですか。

磯野:それは幅広い知識や情報を得るためですか。

ぐっちー:そうなんでしょう。実はブログの中では、良質な情報提供者って限られているわけです。書いている人が何百万といる中で、本当にちゃんと書いている人というのは限られているので、やっぱり実際に会って話をして、「この人は信用できる」っていう人のブログしか読んでないですね。

磯野:私の知り合いで、外資系の投資銀行業務に携って、お金を貯めて、数年前に仕事をやめてニュージーランドにいった人がいます。「もうそれだけ仕事したからいいんだ」と言ってますが、そういう感じはないですか。

ぐっちー:一人だったら今の資産で食べていけるとは思いますけど、ただ、この業界は終わりがないんですよ。もちろん「ここでフィニッシュ」って言えばいいんですけど、ゴルフもあんまり好きじゃないですし。やっぱり東京生まれ東京育ちで、どうも動いてないと気持ちが悪いタイプなんです。笑い話があって、モルガンの時に、たまには骨休めしようと1カ月休暇を取って、アラスカに行ったんですよね。そしたらもう、1週間ぐらいたったらなんか具合悪くなってきて「これはもうダメだ」と(笑い)。だから私の場合は、この業界にいさせてもらえる限りはずっといようと。変化してくるので、面白いですよね。

2008年1月28日

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