七十五歳以上を対象にした後期高齢者医療制度について与党が改善策をまとめた。大切なことは、世代間負担のバランスをとり、皆保険制度を維持していくことだ。この観点からの議論を深めたい。
与党がまとめた改善策は、中・低所得高齢者を中心に、保険料の大幅減額、評判の悪い保険料の年金からの天引きについて、子供ら親族の預金口座からの引き落としを認めることなどが骨子だ。
忘れてならないのは、なぜ新制度をつくったかという経緯だ。
七十五歳以上の高齢者の多くはことし三月まで、国民健康保険(国保)に加入すると同時に「老人保健制度」にも加入していた。
老健制度は、かかった高齢者医療費を健保組合や共済組合などサラリーマンが加入する「被用者保険」に対し「拠出金」として求めてきたが、老人医療費が適正に使われているかどうかをチェックする仕組みにはなっていなかった。
健保組合などは、医療機関などが求める拠出金を際限なく払わなければならず、その額が年々増え続けるので悲鳴を上げていた。
規律を欠く老健制度・拠出金を廃止し、新しい「高齢者医療制度」を設け、老若世代の負担と給付のバランスをとることは、与野党とも合意していた。
超高齢社会を迎え高齢者が増える中で、減少する若い世代への過剰な負担をいかに避けるかは、今後も変わらぬ課題だろう。
同時に、平均所得の低い国保加入の高齢者を被用者保険全体で財政支援して、皆保険制度を守ることもほぼ共通理解だった。
高齢者を別建ての制度にしたのは、その具体化の一つである。
ところが、七十五歳で線引きしたことに理由があったにせよ、予想以上に高齢者の強い反発を招いた。皆で支え合う皆保険制度の理念に反するということだろう。
老若の負担のバランスを取りながら、年齢による線引きをせずに済む方法はないのか。別建ての制度にするにしても他の方法がないのかは今後の検討課題だ。
どの場合でも高齢者の増加に伴い、医療費は増える。保険料と窓口負担の増加を抑えようとすると、税のさらなる投入が必要だが、それには政府支出の中の社会保障の優先順位を見直さなければならない。皆保険制度を守るには、こうした議論を十分時間をかけて行い、現行制度をよりよいものに改善していくことが求められる。
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