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【社説】

財政審建議 増税ありきでは困る

2008年6月4日

 政府の財政制度等審議会が来年度予算編成に関する建議をまとめた。増税路線をにじませているが、国民の理解を得るには、無駄の徹底排除とともに、社会保障の制度改革論議も不可欠になる。

 今回の建議は、経済財政諮問会議が六月末にもまとめる予定の「骨太の方針2008」や夏の概算要求基準策定をにらんで、規律ある財政運営を続けるよう、財務省に厳しく注文をつけた。

 背景には、政府・与党内で高まってきた社会保障の削減見直し論に対する危機感がある。「骨太06」は二〇一一年度までに総額一・一兆円の社会保障費削減を掲げ、この二年間で四千四百億円を削ったが、「もう限界だ」という声は与党幹部からも公然と聞かれるようになった。

 すでに〇七年度補正予算でも、高齢者医療制度の円滑導入という名目で約千七百億円、老人医療給付費負担金で約千四百億円が計上され、削減目標は実質的に骨抜きになっている。こうした情勢を受けて、建議は「骨太06」の堅持を繰り返し求めた。

 国と地方を合わせた長期債務残高は七百七十八兆円、国内総生産(GDP)比で約148%に達し、財政再建は避けて通れない課題である。建議は市場の信認が失われれば金利が上昇し、中長期的に経済成長を損なうと指摘したうえで「消費税を含む税体系の抜本的改革」の早期実現を訴えた。

 是非を含めた増税論議は避けられないが、国民の目線で見れば、無駄や非効率の排除が不可欠だ。道路財源を使ったマッサージ器の購入など、税金の無駄遣いが次々と明らかになった。政府のリストラは、まだ不十分である。

 〇九年度には、基礎年金国庫負担割合の二分の一への引き上げが決まっており、それに必要な財源として消費税の扱いが今後の大きな焦点になる。一方で、民主党だけでなく、自民党からも保険料方式から税方式への転換を唱える声が上がり、年金制度の見直し議論が盛り上がってきた。

 社会保障制度を抜本的に改革するなら、増税が不可避としても、必要な増税幅が変わるのはいうまでもない。民主党は増税に反対している。ねじれ国会の下で増税を実現しようとするなら、与野党がまず制度改革で合意する必要があるだろう。

 本当に安心できるのは、どんな制度なのか。それには、どれほどの財源がいるのか。分かりやすく議論を深めていくべきだ。

 

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