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社説:09年度予算 財政審の仕事は筋通すこと

 09年度予算編成を巡って、社会保障費の削減見直しや教育費増額を求める声が高まっている。また、福田康夫首相は先月末のTICAD4(アフリカ開発会議)で、アフリカ向けのODA(政府開発援助)を12年に倍増することを約束した。北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)後は、地球温暖化対策などで目に見える施策も求められる。

 例年になく歳出圧力が高まっているのだ。一方で、歳入面では企業業績にかげりが出てきたため税収の伸びに多くを期待することはできない。

 そこで、年末の予算編成に向けて二つの道がある。

 第一は、歳出要望に見合った新規財源を何らかの方法で調達する道だ。最も安易なのが国債増発であり、抜本的措置が増税である。第二は、歳入増加をあてにしない前提で、歳出を一段と抑制する道である。

 バブル崩壊後の長期経済停滞で深刻化した日本の財政危機もようやく、脱出に向けた糸口が見えてきたところだ。財政規律の緩みは厳に戒めなければならない重要な時期なのだ。

 その意味では、財政制度等審議会が3日にまとめた09年度予算編成に向けた建議で歳出抑制路線を堅持したことは間違っていない。財政審は財政再建や健全化で筋を通すことを求められているからだ。

 財政は経済情勢の変化に応じた機動的な運営で、経済に安定をもたらすこともできる。ところが、日本ではそうした機能を果たすことが不可能な状況だ。できる限り早く正常な姿に戻さなければならない。そのためには、歳出面で厳しい規律を守らなければならない。財政審はそれを主導する役目を担っている。

 ただ、いつまでも歳出の一律削減でいいとは思えない。財政需要の高い費目でも例外なく削減されるからだ。これまでに取り組まれてきた予算編成時の配分重点化も効果は部分的だ。厳しい歳入事情の中で、財政需要に的確に応えつつ、健全化の実を上げるため、財政審は予算配分の大胆な組み替えに踏み込むべきだ。

 09年度は道路特定財源の一般財源化が最重要課題だ。建議も道路整備計画の重点化、効率化を求めている。これは予算配分の大幅な見直しの出発点になる。

 また、社会保障予算の増加分の毎年度2200億円削減にも無理が出てきている。いずれ消費税などで財源手当てをするにしろ、当面の策として、配分見直しでの対応も可能だ。

 ここで、財政健全化を停滞させてはならない。また、11年度の基礎的財政収支黒字化もつじつま合わせに終わらせてはならない。それには、安定的な歳入が必要だ。財政審は必要不可欠な社会サービスをまかなう歳入のあり方に、もっと踏み込むべきだ。それが責任ある姿勢というものだ。

毎日新聞 2008年6月4日 東京朝刊

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