「下手の道具立て」ということわざがある。たいして仕事もできない者に限って、道具に注文を付け、うるさく選択したがるという意味だ。
道具に頼るのではなく、自らの技量をしっかり磨くことが第一という教訓だろう。もっともだと思うが、技術進歩の著しい昨今だけに、そうとばかりも言っていられない。下手なゴルフも道具の良しあしがスコアに影響するような気がする。
北京五輪を控え、水泳競技で英国メーカーの水着を着けた選手に好記録が相次いだ。水着の違いでタイムに差が出るとすれば、まさに“魔法の水着”。選手たちが使いたいと思うのも無理はない。
対応策として日本水泳連盟は契約する国内三社に水着の改良を求め、先月三十日に示された。締め付けを強くしたり、新素材を使うなどしており、選手が試す場として六日開幕のジャパンオープンが注目の的だ。
日本水連の青木剛副会長の講演を先日、都内で聞いた。「水着は単なる着衣から道具になり、新しい時代を迎えた」と語ったが、競技以外のところで差ができるのはうなずけない半面、ハイテク時代の大波に洗われているようにも思える。
北島康介選手ら金メダルへの期待も高い。トップ選手だからこそ、ここは道具立てをしっかりして、悔いのない形で本番に臨んでもらいたい。