世界的な食料危機と価格高騰への対応を協議する「食料サミット」が三日から三日間、ローマで開かれる。国連食糧農業機関(FAO)が主催する国際会議で、閣僚級のハイレベル会合を格上げし、各国首脳の参加を呼び掛けた。
日本からは福田康夫首相が出席、フランスのサルコジ大統領、ブラジルのルラ大統領ら六十カ国程度の首脳が集まる見通しだ。食料危機打開に向け国際協調を急ぎ、世界に強いメッセージを発信すべきである。
食料価格高騰の波は、世界各地に広がる。二〇〇六年秋ごろからトウモロコシ、大豆、小麦の国際価格が上昇し、コメも今年に入って急騰した。いずれも上昇前の二―三倍の水準だ。低所得国では食料確保が困難になり、カリブ海のハイチ、アフリカのモザンビークなどで暴動も起きている。
高騰の背景に挙げられるのは、中国やインドなど新興国の消費拡大、穀物を原料とするバイオ燃料の生産増加、原油高に伴う資材や輸送コスト増、農産物市場への投機資金の流入などである。さらに、ベトナム、インドなどが自国の食料確保を優先してコメや小麦などの輸出規制を発動していることも供給不足への不安感をあおり、価格押し上げの要因になっている。
国連は今回の食料危機で新たに一億人の飢餓人口が生み出されると警戒し、貧困国対策を最優先課題に位置付けている。
サミット参加の各国は、短期的な対策となる食料援助や、中長期的には途上国の農業生産強化が必要といった認識では一致しよう。ただ、バイオ燃料や輸出規制の見直しでは立場に大きな隔たりがあるだけに、宣言文書に盛り込む表現をめぐって激しい駆け引きも予想される。
食料問題は七月に日本が議長国となる主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)でも中心的な議題となる。それだけに福田首相は既に一億ドル(約百五億円)の緊急食料援助や、アフリカのコメ生産倍増に向けた農業協力を表明するなど積極姿勢を前面に出している。食料サミットでも、途上国が食料を増産できるよう、種子や肥料を提供する五千万ドルの追加支援を打ち出す考えだ。
福田首相はさらに、穀物生産国による輸出規制について国際的な監視制度の創設を提唱するほか、バイオ燃料の増産が食料危機を助長しているとの観点から、食料と競合しない「第二世代バイオ燃料」への転換も訴えることにしている。食料問題でも議論をリードし、洞爺湖サミットへつなげてほしい。
NHK記者らによるインサイダー取引問題を調べていた外部識者による第三者委員会が公表した調査報告書は、倫理観、職業意識が決定的に欠けていたと厳しく指摘した。委員会は報道関係者の株取引の全面禁止など再発防止策十項目を提言したが、実行できないようではNHKの公共放送としての信頼を取り戻せまい。
報告書は、インサイダー取引で懲戒免職となった報道局の記者ら三人のほかに新たなインサイダー取引は認められなかったとしたものの、過去三年間で少なくとも八十一人の職員が休憩を含めて勤務時間に株取引をしていたことを明らかにした。NHKが問題発覚直後に、全職員を対象に実施した緊急調査では勤務時間中に株取引をしていたと報告された職員は数人しかいなかった。大幅増になったことは、NHKの自浄能力に疑問が持たれよう。
委員会は株を保有すると答えた職員に対してデータ開示請求の一切の権限についての委任状提出を求めたが、拒否する職員が数多く出るなどで調査は続行できなかった。全容解明とはいかず、任意の調査の限界が露呈した。
不祥事が発生するたびにNHKは再発防止を誓ってきた。しかし、報告書はこれまでは事後的な処理に終わり「新しいリスク対応がおろそか」と、コンプライアンス(法令順守)施策の不備を挙げ、「組織の存続に対する部門を超えた一体的危機意識に乏しい」と断じた。
提言した再発防止策十項目の中には「プロのジャーナリスト、報道機関とは何か」「公共放送の使命」の議論を組織内で活発に行うことや、定期的、継続的に検証番組をつくるなどもある。組織の緩みを反省し、一から出直す覚悟が必要だ。
(2008年6月3日掲載)