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日本全国のダムで大きな問題を生み出しているのが、揚水発電所である。最近では、 ダムといえば揚水ダムと言われるほど、この奇怪な人造貯水湖が全国に続々とつくられてきた。 これは、水を下流に流すだけの従来のダムと違って、二つの貯水湖のあいだを水が上下する方式の ダムである。 揚水ダムでは、水が下に落ちる時にはエネルギーが発生するので、一般の水力発電と 同じように電気を生み出す。しかし落ちた水は、自分で上に戻ることができないので、今度は その下流側の貯水湖の水を、電気を使って上に汲みあげるのである。それで、揚水ダムあるいは 揚水発電所と呼ばれている。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - なぜこのようなダムを建設するかと言えば、原子力発電が夜間に運転を停止できない ためである。夜間にあり余る原発の電力を使って、水を夜のうちに汲みあげておき、日中に大量の 電気が消費される時に、その水を落として発電するのである。いや、そのように説明されている。 何も知らずにこの説明を聞くと、いかにも合理的なダムであるかのように感じられる。 ところが実際には、水を汲みあげるのに必要な電力が100万キロワットとすれば、汲みあげた水を 落として生まれる電力は、ほぼ75万キロワットである。四分の一の電気が何にも使われずに 消えるのである。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 原発では、原子炉で発生した熱量のわずか三分の一しか電気に変換できないため、 残り三分の二の熱を海に捨てている。このようにしてようやく取り出した電力のうち、夜間には、 またその四分の一を山間のダムで捨てているわけである。 このようにしないと、電力の消費を加速できないので、原発と抱き合わせの必需品として 次々と揚水ダムが建設されてきた。そこに群がるのが、鹿島や清水、ハザマなど大手ゼネコンで あり、それらの関連組織に天下る通産官僚たちである。 彼らは原発でかせぎ、同時に揚水ダムの建設でもかせぐ。これが、 通産省・資源エネルギー庁・建設省・科学技術庁の官僚と電力会社が、われわれの電気料金と 税金を、文字通り湯水のごとく捨てている科学立国の実態である。 - - |
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