お偉方の説得に使えそうな、ウェブでROIを向上させた特徴的な事例
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自社サービスにウェブを導入する必要が本当にあるのかと聞かれたら、僕は、たいていの場合はイエスだと答えるね。宅配ピザのパパ・ジョンズ(PapaJohns.com)に関するAP通信の記事を見てみよう。
米国3位の宅配ピザチェーン店のパパ・ジョンズは5月7日、10億ドルの記録的売上を達成したと発表した。米国におけるオンラインでの売上が、1年あたり50%を上回る勢いで拡大したという。同チェーンの2001年におけるオンライン売上は総額2,040万ドルだったが、昨年は4億ドルに近づいた。
パパ・ジョンズによると、売上の20%以上がオンライン、あるいはテキストメッセージによるものだという。テキストメッセージによる注文方法は、昨年導入されたもの。同社は、テキストメッセージでの売り上げが期待どおりの業績を上げていると説明したが、具体的な数字は挙げなかった。
ワシントン地域でパパ・ジョンズのフランチャイズ店を多数経営しているアンディ・フレイタス氏は、同地域にある50以上の店舗で、オンラインによるサービスが総売上の拡大を促進していると語った。オンラインでの注文が、総売上のおよそ半分を占める店舗も複数あるという。
同氏は、「オンラインによる注文が、事業で大きな比重を占めるようになるだろうとは思っていたが、期待を大きく上回るものだった。これからさらに拡大していくだろうと考えている」と述べている。
宅配ピザをよく利用する年齢層は、オンラインに夢中の若者たちに若干偏っているかもしれないが、米国の消費者向け市場で最も主流と呼べる部分でさえも、ウェブを利用することに価値を見出しているということは、とてもいい兆候だ。
なぜこれほどまでにうまくいったのだろうか? パパ・ジョンズの場合は、「ユーザビリティ」(使い勝手)というのが僕の回答だ。
比較のためにまず、ネットを使わない、通常の電話によるピザ注文プロセスを見てみよう。
- 以下の事項について判断する:
- 自分の地域にピザを配達してくれる店
- 価格
- 品質(味)
- 信頼性と配達にかかる時間
- 注文したいピザ屋のメニューを見るか、そのピザ屋に電話をかけてメニューや価格を尋ねる。
- ピザ屋を待たせておき、注文内容を検討したり、一緒に注文する仲間と相談する。
- ピザを注文する。
- 支払いに必要なクレジットカード情報を知らせるか、商品と引き換えに支払うと伝える。
- 電話を切って、ピザが届くのを待つ。
僕らは皆、長年こういうやり方をしてきた。正直に言って、難しい手続きではない。実際、「ピザを注文するぐらいに簡単だ」なんていう表現だってあり得るくらいだしね。
しかし、公平を期すために、(パパ・ジョンズのサイトから借りてきた画像を使って)ウェブで同じ手続きを行った場合を見てみよう。
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このホームページは商品の内容を知らせるためのものだが、すばらしいことに、すべてのスペシャルメニューが掲載されたページへのリンクがある。電話でスペシャル・メニューについて正しく理解するのは大変だし、自分にぴったりのピザを注文しているのか、ときどきわからなくなってしまうことがある。
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確かに、メニューを見る前に住所を入力しなくてはならないのは面倒だけど、自分の住んでいる地域でどんなメニューを宅配しているか(そもそも宅配をやっているかどうか)を調べられるというのは良い点だね。パパ・ジョンズは地域によって価格を多少変えているんだと思うけど、昔ながらの電話による注文に比べ、何か失うものがあるわけではないので、大目に見てもいいだろう。
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オンラインメニューを用意しておくことで、利便性が大幅に向上する。パパ・ジョンズが顧客に付加価値の高いスペシャルピザを販売できるだけでなく、顧客は暇なときにすべてのメニューを価格や説明(さらには写真)と一緒に見ることができる。これは、オフラインではほぼ不可能なことだろう。
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「お好みのピザを作る」注文フォームこそ、オンラインシステムが本当にその力を発揮する部分だ。お好みピザの注文は、電話では決してうまくいかないが、ウェブシステムなら、正しく注文を指示して、ピザの作り手に対し、確実に自分が希望している内容を伝えることができる。人為的なミスが起こる可能性が残っているにせよ、大幅に減るのは確かだ。
さらにすばらしいのは、ウェブの注文内容は履歴に残るので、間違った商品が届いた場合、受け取りを拒否したり、安くしてもらったり、無料にしてもらったりできることだろう。
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注文確認と支払い方法選択は、ほぼ期待どおりの使い勝手になっている。ここですばらしいのは、注文を出す前に自分の選択を見直したり、変更したり、好みどおりに修正できるという部分なんだ。電話での会話による通常の注文手続きでは、この部分でじっくり時間を取るわけにはいかないから、自分の予算やパーティーの参加人数にぴったりの注文を出すことが難しい場合もあるよね。
そろそろこの辺で、読者からのこんな声が聞こえてきそうだな。「そうだね、Rand、言いたいことはわかるよ。オンラインでピザを注文することは、電話で注文するのに比べて、メリットがたくさんあるよね。そしてもちろん、多くの人たちがこのサービスを利用している。しかし、一体これがSEOとどんな関係があるんだい?」ってね。
その質問に対して手短に答えよう。
僕はこれまでに、オフラインで行われているまったく普通の簡単な手続きが、ウェブの助けを借りてさらに簡単で便利になる事例をいろいろ見てきたが、パパ・ジョンズはそれを最も明確に表す実例の1つなんだ。そしてこれは、他者に先駆けてウェブをサービスに導入した企業が経験した、まれに見るサクセスストーリーでもある。
ここから学ぶべき大事な教訓は、オフラインで行われているどんな手続きも、ウェブで使い勝手を向上させることによって、ビジネスチャンスが生まれるということだ。そう、レストランの注文から、契約の承認、貸し事務所の賃貸契約、水道工事の依頼にいたるまで。
では、どんな企業でも、業務手続きにウェブを導入する必要があるのだろうか? 答えはノーだ。ウェブが必要なのは、顧客をもっと増やしたいとか、既存の顧客をもっと満足させたいとかいう場合に限る。そうさ、宅配ピザチェーンが成功したんだから、君にもきっとできるよ。
追伸:頭の切れる匿名の読者が最近、オフラインで行っている通常の手続きにウェブを採用することでROIを上げられるということを、お偉方を納得させるのに役立つ作戦を教えてほしいと言ってきたんだ。この記事がお役に立てばうれしいね。
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