離島や山間部の医療過疎地域で働く医師、看護師らをバックアップする「地域医療人支援コーディネーター」の養成コースを、島根大医学部が全国で初めて開設する。基礎知識を学んだ専門家が、住環境や家族の事情などの生活面を含めて医療関係者を支援し、定着を図る。医療現場では、こうしたコーディネーターの導入自体が初めての取り組みで、新臨床研修制度導入などにより地方の医師不足が深刻化する中、注目される。
09年度に大学院医学系研究科内に開設。初年度は定員3人を予定。2年間で生命科学などの基礎的な知識のほか、医療経済・政策学、心理学などを学ぶ。隠岐諸島や中山間地の病院・診療所、保健所で4カ月間の実習も必修とし、夜間診療や訪問診療の現場に触れ、勤務実態を勉強する。
大学側は医療行政を担う自治体職員を主な対象と想定し、独自の認証資格の創設も検討。社会人は在職しながら受講できるカリキュラムを組む予定で、研修制度としての活用も全国の自治体に呼び掛けていく。
地方では、研修医が研修先を選べる新臨床研修制度の導入(04年度)後、若い医師が都会へ流出。大学病院に残る医師が減り、派遣を大学に頼ってきた地域では医師不足が深刻化している。
島根県は人口10万人当たりの医師数は263・1人で全国平均(217・5人)を上回るが、医師が都市部に集中。離島・隠岐の島町の公立病院は06年4月から半年間、産婦人科常勤医が不在となり、お産ができなかった。今年7月以降は精神科病棟が一時閉鎖される可能性が高まっている。
多くの自治体が医師確保に躍起になっているが、担当者だけでは、働きやすさやキャリアアップ、家族の事情を重視する医療関係者側の事情まで手が回らない。島根大医学部付属病院の小林祥泰病院長は「医療者を確保できても、支援体制がなければ定着しない。医療者と信頼関係を築くことも重要で、そのための人材を育てたい」と話している。【細川貴代】
毎日新聞 2008年6月2日 大阪朝刊