悪質客引き減ったが… 閑古鳥なぜ鳴くの 郡山
<取り締まり厳しく> 雨が上がった5月29日夜、規制対象区域になっているJR郡山駅前の繁華街に足を向けた。以前なら5分と歩かないうちに黒服の客引きが寄ってきてキャバクラなどに誘ったが、その姿はほとんどない。客引きらしき男を3人見かけたが、声は掛けてこなかった。 条例は、接待を伴う飲食店や風俗店への客引き、従業員のスカウトなどを禁止している。客に声を掛けただけで違反となり、3カ月以下の懲役か20万円以下の罰金(常習は別)が科せられる厳しい内容だ。郡山署は取り締まりに力を入れ、これまでに男女4人と一法人を摘発した。 <「善しあし半々だ」> 29日に市役所であった条例検証会議。郡山署の成瀬正宏生活安全課長は「警察としては市から最高の“武器”をもらった。カラス族の犯罪をなくさなければ、駅前は良くならない」と語った。少年非行を防止し、暴力団の資金源を断つためにも積極的な取り締まりを続けるという。 市が報告した実態調査では、施行前(2月1日)に92人確認された客引きが、施行後の5月2日は8人、6日は5人に激減した。 しかし、会議では「善しあし半々だ」との意見も多かった。郡山飲食業組合の松崎昭信さんは条例の成果を評価しながらも、「通行人が少なくなり、さみしくなった感じは否めない」と実感を込めて話した。 客足が遠のいたためか、ここ2カ月ほどで、駅前地区で約30店の飲食店が閉店を余儀なくされたという。しわ寄せは酒の卸業者などにも及び、売り上げが半減した業者もいると指摘されている。 郡山社交飲食業組合の前畑匡伸組合長は「建設業を中心とする不況が夜の街を直撃している。条例の影響だけではないだろうが、何らかの対策は必要だ」と言う。 <店分からぬ県外客> 悪質ではない客引きもいなくなり、出張で訪れたビジネスマンらが「どこに飲みに行っていいか分からない」と出歩かなくなったとの指摘もある。郡山飲食業商工会の堀之内守顧問は「特に県外の客は困るだろう。業界などで『飲食業ご案内人』のような制度を導入してはどうか」と提案する。 繁華街を浄化して安全・安心な街になれば、客も増えてにぎわう―と考えた市のシナリオは、残念ながら崩れかけているようだ。 樋口功市民部長は「安心して飲める環境があるのだから、景気が良くなれば客足は戻るだろう。厳しい状況は続くが、店には明るい街づくりのために協力をお願いしたい」と話した。
2008年06月03日火曜日
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