放送の内容を概略としてまとめる

 関西ローカルの番組であるが、午後3時49分から午後6時まで放映されている「ムーブ!(情報番組)」において、柔整叩きキャンペーンが行われた。番組内の「ムーブ!の疑問」なるコーナーであり,放映は6月19日・26日、7月2日、7月10日(7月11日現在)と計4回(実際には6回)行われれた。以下に、朝日放送HPの番組情報から抜粋し、業界としての見解(SSRとしての見解)を掲載してみた。

 放映であり新聞等と異なり、具体的な放映内容をお掲載することは出来ない。ローカル番組であり、且つ、視聴率が低い関係 (私も知らなかった!) で、然程問題視されるものではないが、第1回目の放映は結構辛辣に表現していたものである。内容を把握すると、業界における不満者がTV局にタレ込んで、TV局がそのまま報道したものと推察される。

 縁があって筆者もTV局の担当ディレクターと話すことが出来た(第1回放映後)。本来は業界の代表である社団のリーダーにコメントを求める必要があるが、社団が取材を一切拒否したとのことである。業界関係者のコメントを欲しいと言うので、「冗談話などの一部を採用して面白可笑しく報道したいでしょから、カメラ取材は拒否します」としたら、後ほど電話があり、1時間半に渡って電話で話をしたものである。

 業界関係者の立場からの説明を行い(白紙委任・請求の実態など)、「それでも、それは単に業界のエゴであると判断するのであれば、誰がどのように貴方にリークするのか知らないが、どうぞおやり下さい。貴方の判断で行うことだから止めさせる権利もない」と。又、「今後も継続して報道するのであれば、業界の正しい知識を得てから報道すべきでしょう。その際にはいつでも取材は受けますよ」と。
 「貴方は反響が大きいと表現するが、大阪府に限ってでも一ヶ月に何万人もの患者が来院している。この内の反響が大きいと判断するのは、何百人・何千人ですか?、多分あっても数十人程度でしょう。それだけの反応者(患者としての情報提供者)がいるから、柔整は大半そうである、との判断は行き過ぎではないでしょうか?」と。

 2回目・3回目は不正の実態(多分、これも業界人のタレコミ)が表現されていたが、相対的には「そのような柔整師は一部であろう」との流れであり、「基本的に白紙委任を生む受領委任などについて、柔整の仕組みを変えないといけない」とのコメントが一般的であった。この表現はアナウンサーがしたものであり、上手く纏めていると感心したものである。
 但し、コメンテーターとして 勝谷 誠彦 氏のみが騒いでいる状況であり、「柔整を潰さねばならない。柔整関係者から脅しを受けた、絶対に潰してやる!」と。


以下は、朝日放送「ムーブ!」のHPより抜粋したもの

6月19日放映 「コムスンより根深い?接骨院の不正請求?」
 コムスンの介護報酬不正請求事件が問題になっているが、もっと身近な接骨院業界では、以前から保険の不正請求が行われていると聞いた。これが本当ならどうしてなくならないのか?という疑問。
 そもそも接骨院は、「整骨院」「骨つぎ」なども基本的には同じ。開設できるのは国家資格を持つ「柔道整復師」。医師ではないので医療行為はできないが、「急性、亜急性で外傷性の打撲・捻挫・挫傷(肉離れ)・骨折・脱臼」だけは、観察・施術という名目で扱える。
 そして、接骨院でも健康保険が使える。肩こりや腰痛、ひざの痛みを、接骨院で見てもらうという人がいるが、「神経痛・リウマチ等の疾病からくる痛み」や「慢性の肩こり・腰痛」はみることが出来ない。しかし、本来保険がきかないものを、保険がきく病名に書き換えて、不正な療養費の請求が行われているという。
 接骨院の保険請求には、一応制限制限がかけられている。病院なら、保険証を提示すれば患者が自己負担する額以外の医療費は自動的に、健保組合に申請してくれる。ところが、接骨院では、保険証を提示するだけではだめなのである。治療を受けた後に、保険を請求するための「委任状」を患者に書いてもらわないと、接骨院は保険組合からお金をもらえない。
 ところがここでも不正が行われており、柔道整復師の中には「保険使うので委任状書いて下さい」と施術前から“白紙委任”を求めるケースがあったり、別の関係者によると、慢性的な肩こりでも「捻挫をした事にしましょう。保険がきいて安くなりますよ」と患者に持ちかけるところもあるそう。


6月26日放映 「柔道整復師の不正請求を暴く」
 先週、接骨院で健康保険の不正請求が行われていると紹介したところ、視聴者の方から、続々と反響があった。不正が行われているなら、私たち共通の財産で、病気のときに頼らないといけない、健康保険財政から余計なお金が吸い取られているということ。
 視聴者の方から頂いた情報にあるような白紙委任や保険の不正請求は、果たして本当に行われているのか取材したところ、接骨院に月に4回通う人の場合、本来なら、その月最後に行ったときに、患者が「負傷名」「通院日数」、「施術内容」「合計金額」などを確認して、署名するのが原則。
 しかし、接骨院に聞くと、みな口を揃えて、本来は良くないが、実際に月末の署名を待っていて、もし患者が来なければ、保険請求できないケースが出てくるので白紙委任は仕方ない、と言う。


7月2日放映 「柔道整復師の手口を暴く、健保より国保」
 視聴者からの情報提供は続いており、さらに取材を進めると、より明確な不正受給の手口がわかってきた。ある接骨院は、週に2回150円ずつ支払えば、その週は、あと4日間、無料で施術を受けられるキャンペーンをしているところがあった。
 また別の方によると、月初めに1500円(10日分の自己負担)を払えば、その月は何度施術を受けても無料、というキャンペーンもあった。普通の病院では考えられないことである。また、通院日数を水増ししたのではないかと思われる情報が、次々と寄せられている。
 そういう人を取材すると、日数が水増しされている上に、患者さんが窓口で支払った金額から逆算して金額が、合わないケースが多い。
 ある患者は、市役所に問い合わせると「調査して欲しければ氏名を言えといわれる、氏名を接骨院に知られるともう通えなくなる」と、複雑な思いを話す。
 働いていたという人は「不正請求は健康保険によっても、違っていて、組合健康保険はチェックが厳しいので、負傷部位を水増しする程度に抑えます。国民健康保険はチェックが甘いので、月に20日ぐらい来たことにするんです」と語る。チェックが甘い国保が狙い撃ちされているようである。


7月11日放映 「接骨院不正請求疑惑 全柔協理事長と生激論」
この放映は Today'sムーブ のコーナーとして放映され、HP内の説明はない
 内容としては、「報道がやらせである」と朝日放送に抗議文を出したものを受けて、朝日放送が取り上げたもの。全般としてコメンテーターから馬鹿にされる内容であり「柔整師の施術は医療行為の一部として認められており、治療である」との説明では完全にシラケルものとなった。
 又、「やらせ放送とは一体どういう根拠で言うのか?、その根拠を出しなさい」と追求されると「患者のコメントを取るなら、接骨院の了解を求めるべき」「不正と報道するなら、行政に告発を」と全く関係なき回答。
 今回の最大なるポイントにおいては「白紙委任ではなく柔整委任である」との説明であり、ほとんど皆に理解されず、結局何の成果もなく柔整業界に「不信感が増した」だけであった。慢性疾患の施術における保険適用については、兵庫県の元社団執行者の施術所で働いていたと称する元柔整師が「全て保険で請求していた」と証言する始末となった。
 全般に渡って、堀江アナウンサーが的確に問い詰めたが、最後は「業界の自浄作用で対処すべきでしょう」と、穏便なる助け船を出して完結したものである。


上記4回放送以降は、「朝日放送への意見書(PDF版)」を参照されたい。



業界関係者として朝日放送へ説明論旨、及び、業界としての見解

白紙委任について

 柔整療養費請求は「受領委任制度」という特殊な請求方法で行われている。本来ならば、一日の施術毎に明細を表示して署名を貰う必要がある。しかし、毎月請求(合計)により請求する制度から、一ヶ月の明細を提示して署名を貰うのは物理的に不可能である。
 患者(被保険者)と施術者の相互信頼により、不合理ではあるが前以て署名を貰っているのが実態である。勿論、患者に対して「受領委任制度」の主旨を説明し、その相互信頼関係から、前以て署名を頂くことを承諾して貰わねばならない。

 勿論、「白紙委任」そのものは絶対に容認されるものではないが、この永年に渡って培ってきた相互信頼を、柔整師が裏切り・悪用していると判断されるのであれば、業界としては心外である。

 受領委任制度は、過去相当以前から採用されており、医療と同等に患者・施術者・支払保険者の相互信頼により成り立っている。但し、柔整の請求においては「健康保険法」などの法律に則っているものではなく、厚生労働省の通知により受領委任の承諾・施術の方針・書式の提示・料金体系等と定義されているものである。

 又、柔整療養費の原則は「現金給付(償還払い)」であり、具体的に給付する・しないは支払保険者に任されているものであり、書式の形態を規定しているものに過ぎない。


患者傷病名について (肩凝り・慢性疾患を捻挫として請求しているとの質問)

 患者が来院してその症状を訴えることから柔整の施術は開始される。その時に患者の症状を誘導することはないし、その必要もない。柔道整復師としては傷病に係る診断は出来ないので、患者の症状からの判断で傷病名を決定することになる。

 これは、柔整の請求においては「傷病名をもって部位」とする「部位別請求」の原則があり、業界としては苦渋の判断として「傷病名を記載」している。よって、傷病名は「そうであろう!、そうかも知れない」と理解するのが正解である。

 敢えて論戦する必要はないので話さないが、「肩凝り・慢性疾患を捻挫とすれば、安い金額で出来ますよ!」と誘導している柔整師がいるのであれば、柔整師としては失格であり言語道断である。近年、専門学校の著しい増加に伴い、柔整師の数が多くなり問題視されているが、業界においても当然質の低下を含めて危惧している。

 柔整請求が素通りしていると言うが、都道府県単位における公的審査会・国保連合会における準公的審査会も存在しており、その傾向的な兆候請求により、審査で不正なる請求については判断される。
 これに基づいて行政による「個別指導」も実施され、不正たる場合においては処罰に至っている。又、不正における処罰も近年は厳格化されており、5年間の受領委任取扱停止(保険取り扱い停止)処分となる。

 又、「水増し請求」における報道が為されているが、近年においては医療通知制度が浸透しており、患者により歴然と判明するものである。これにより簡単に発覚出来ることから柔整の大半が行っているものではない。
 どの業界においても不正行為を行う輩はいる。発覚すれば施術の過去5年間に遡っての返金と、今後の5年間受領委任停止処分が待っている。

 「キャンペーン等と称して一部負担金を安くしている」「負担金を免除して、患者の誘い込みをしている」との報道であるが、柔整施術においても健康保険法に定められた一部負担金は正しく徴収せねばならないのは当然である。

 報道が正しいとすれば、言語道断であり即処罰対象となる。水増し不正と同様であり、この場合も、言い訳して逃れることは出来ない。勿論、業界に蔓延しているものではない。


施術所の看板表記などについて

 「施術所に肩凝り・慢性疾患などと様々な表現がなされているが、これは問題ないのか」と質問があったが、柔整施術所における表現については医科と異なり法律に則っているものではない。

 確かに標榜出来る範囲については、健康保険法・医師法などの法律により規制されているが、柔整は医療機関ではない(医療類似行為であり、医療のグレイゾーンに入る)ので、施術所の標榜規制については該当しないものである。

 肩凝り・慢性疾患などの表現については「自由診療」の部門に入るので、柔整施術とは関係なきものである。自由診療における標榜についての規制はないので、単に併記しているだけと解釈されたい。

 勿論、医療機関と間違えるような表記は問題であり、この規制については保健所の管轄で、当然として行政指導による是正勧告となる。


保険者からの質問状を持参するように、ポスター掲示していることについて

 施術所内において「保険者からの問合せがあったら相談して下さい」と表記すべきものであるが、表現が間違っている・誤解される表現を行っているものであろう。

 患者が自らの保険者より「柔整施術の問合せ文書」が届くケースがある。これに患者がどのように記載していいのか判断出来ないことが多い。それに対応して「問合せ文書において、理解出来ない場合には相談して下さい」と表現しているものである。

 回答書は患者が記載するものであり、柔整師の説明により「患者自らが記載して提出」しているものである。