韓国の李明博大統領の支持率低下が著しい。3日で就任100日目を迎えたが、韓国紙・中央日報の世論調査では19.7%と、ついに20%を割ってしまった。歴代政権の初期と比べてもこれほどの低迷ぶりは例がない。日米韓や日中韓の連携強化を進める李政権の不安定化は日本としても無関心ではいられない。
2月末の就任時に50%を上回っていた李大統領の支持率が30ポイント以上も急落した最大の理由は、米国産牛肉の輸入再開を巡る混乱だ。
米韓両国は4月の首脳会談の直前、米国産牛肉の輸入制限を段階的に撤廃することで合意した。BSE(牛海綿状脳症)発生に伴って2003年末から続けてきた輸入制限措置が事実上撤廃されることになり、ブッシュ、李両大統領の初の首脳会談にも弾みがついた。
ところが「韓国人はBSEに感染しやすい」といったうわさがネットに流れると、10代の若者を中心に輸入反対運動が一気に広がり、ソウルでは大規模な集会やデモが連日開かれる異常事態になってしまった。
当初、ネット上でのデマやうわさを傍観していた青瓦台(大統領府)もネット対応要員を慌てて増員。検疫強化も約束し、「BSEが発生したら即刻輸入を禁止する」と火消しに躍起だが、ネット時代の民心への対応に出遅れた感は否めない。
「食の安全」は国民の大きな関心事だ。国民に十分な説明もなく輸入再開を決めた李政権の責任は無視できないが、支持率急落の背景に物価の高騰や雇用不安など、経済的な不満を指摘する声も根強い。
韓国大統領の任期は5年。いくら国内経済の活性化を公約して当選したとはいえ、経済面での成否を就任100日で判断するのは早すぎる。米国産牛肉問題を巡る混乱を早期に収拾し、法人税の減税や外国投資の活性化といった大胆な政策を通じて、経済改革の目に見える成果を示すことが支持率回復の近道だろう。
牛肉問題の影響で年内批准が危惧される米韓の自由貿易協定(FTA)もしかりだ。同じ中央日報の世論調査では「締結すべきだ」との回答が59.8%に上り、「締結反対」(33.8%)を上回ったという。これもまた民心である。