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社説1 独禁法も地域力再生法も審議進めよ(6/3)

 今通常国会へ政府が出した法案のうち、構造改革を推し進めるうえで成立が望まれる重要法案の審議が滞っている。その代表は独占禁止法改正案と地域力再生機構法案だ。

 原因は民主党が審議に消極的なためだ。今国会は会期末まで2週間程度を残すだけになった。いたずらに先延ばしするのは責任ある態度ではない。問題点を指摘するなり与野党で修正協議するなり、成立へ向けて審議を進めることが肝要である。

 独禁法改正案は入札談合やカルテルへの抑止力を強めるのが狙いだ。違反を主導した企業への課徴金算定率を本則の1.5倍に引き上げる、違反事実を公正取引委員会に「自首」した企業への課徴金の減免制は拡充する、などを盛り込んでいる。

 違反抑止力を高めることは企業が健全な競争を繰り広げる舞台が広がることを意味する。それは技術革新やコスト削減の努力を促し、結果として消費者に恩恵をもたらす。欧州委員会の事例を持ち出すまでもなく、企業間の競争政策の強化は国際的な流れでもある。

 にもかかわらず、民主党は審議入りを拒んでいる。衆院で趣旨説明も行われていない。同党は違反抑止強化には異論はないが、行政審判制度の改革が法案に盛り込まれていない点などを問題にしているという。

 審判制度は公取委の課徴金納付命令などに企業が納得できない場合に開く。このあり方は独禁法改正の論点だが自民党と公取委との意見対立が解けなかったこともあり、具体的な改革案は先送りされている。

 だからといって、課徴金制度の改革の審議に応じないのは道理に合わない。法案の問題点はあくまでも審議を通じて明らかにすべきだ。

 地域力再生機構法案は昨年3月に解散した産業再生機構の地方版を創設するのに必要な法整備をするのが趣旨だ。新機構は経営不振に陥った第三セクターなどに対する事業再生や破綻処理の調整機能を持つ。

 衆院内閣委員会で参考人質疑もしたが、民主党は審議を進めることに後ろ向きだ。反対の理由は(1)民間ファンドでも機能は果たせる(2)第三セクターを支援する際の基準が明確でない――などだという。

 確かに機構が民間ファンドの事業機会を邪魔することがあってはならない。事業再生の対象を厳しく絞り込む歯止め策も欠かせない。その点は私たちも主張してきた。しかし自治体財政の再建には重荷になっている第三セクターの処理は避けて通れない。与野党はその点を第一に考えて成立への道筋を探ってほしい。

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