そもそも街の魅力は何によってもたらせるのか。答えは明快でした。
例えば買い物に出て、偶然いろんなものが目に入る。さまざまな出会いがあり、何かしら満たされる。
そんな面白さこそが都市の魅力で、半径百メートルほどの歩ける範囲に凝縮したにぎわいのある空間が必要です。郊外の大型店などの管理された空間だけでは満たされない。気軽に店ができたりする裏路地のような混とんとした場所が重要です。
人々が都市の楽しさを比較する時、全域ではなく、中心部を見て判断します。都市の評価や吸引力を決める大きな要素になるわけです。
これらは、藻谷浩介・日本政策投資銀行地域振興部参事役の言葉です。連載「地域の針路を問う」の新たなシリーズとして、識者インタビューを東京支社で始めました。その初回として五月二十九日の紙面に掲載しました。全国の都市をとことん歩き、街づくりの見識に定評がある人だけに、核心をついています。
岡山市を中心とする岡山県南都市圏は施設などが郊外に分散し、こうした核となる集積が弱いことが問題だと指摘されました。四国などから電車で訪れる人に向けて、駅から歩いて楽しめる街づくりもできていない。都市圏人口百四十万人を擁する中四国の交通結節点でありながら地域振興が進まない理由でもあります。
都市政策の失敗といえるでしょう。何が問題で何が必要か、もはや明らかです。これまでの考え方を改め、郊外への分散の抑制や中心部に人を集める公共交通の改善といった施策が急務です。
(東京支社・岡山一郎)